ニュース裏表 安積明子 岸田首相の懐刀、木原氏周辺に〝文春砲〟官邸去った後の相談相手は国民・玉木代表に? 永田町で注目される人事と解散

「これで年内の衆院解散はなくなりましたね」
こう水を向けると、ある議員は静かにうなずいた。
「これで」というのは、先週発売の週刊文春(7月13日号)が報じた、木原誠二官房副長官の親族に関する〝疑惑〟だ。
木原氏の顧問弁護士は5日、司法記者クラブに宛て、「マスコミ史上稀(まれ)にみる深刻な人権侵害」として、抗議の意を表明する「御通知」を送付した。文書によると、木原氏側は、週刊文春の発行元の文藝春秋社や、記事の関係者を刑事告発する意向だという。
岸田文雄首相の「懐刀」とされる木原氏は官邸を取り仕切る立場だ。内閣支持率が下落する現在、今回の「文春砲」は痛い。
仮に、腹心の木原氏が官邸を去った場合、岸田首相の相談相手は誰になるのか。もしかしたら、国民民主党の玉木雄一郎代表かもしれない。
木原氏と玉木氏は、東大法学部から大蔵省(当時)に進んだ同期だ。キャリアは見劣りしない。玉木氏は、岸田首相の派閥「宏池会」のトップだった大平正芳元首相と同郷(香川県)で後継を自負しており、親和性がある。岸田政権には是々非々の態度で、玉木氏が率いる国民民主党は、2023年度予算に賛成した。野党としては異例の対応だ。
一部で木原―玉木のホットラインが報じられたことがあるが、永田町で広まるのは両者の「不仲説」だ。木原氏は国民民主党が主張したガソリン税の一部を減税する「トリガー条項の凍結解除」に理解を示さなかったこともある。
実際、自民党と国民民主党の連絡役を担っていたのは、古川禎久法相(当時)と、古川元久国対委員長の「FFライン」とされる。同い年で、ともに東大法学部卒というだけではなく、気心が知れた「大人の関係」だとか。
岸田首相と玉木氏は、以前から頻繁に電話で連絡を取り合う関係だったと聞く。こちらは、木原氏が官房副長官を外れれば、関係はよりダイレクトになり、両党が連立を組むことになっても不思議ではない。
そうなれば、国民民主党の前原誠司代表代行は離党し、京都府議会と市議会で統一会派を結成する日本維新の会と合流し、一気に政界再編が進む…。という流れも想定できる。
だが、木原氏はそう簡単に、官房副長官の地位を手放さないかもしれない。もしそうなれば、岸田首相は衆院解散のタイミングをつかみあぐね、内閣支持率は、ますます低下していくのではないか。 (政治ジャーナリスト)