避難住民「恐ろしくて眠れなかった」 秋田豪雨の恐怖語る

秋田豪雨でJR秋田駅東側を中心に広範囲で冠水した秋田市の住民が16日、「避難しても恐ろしくて眠れなかった」と恐怖を語った。
避難所の1つでJR秋田駅東口前の官民連携の複合拠点施設「アルヴェ」。2キロ余り離れた太平川が氾濫した15日午前11時過ぎから自主避難の住民が集まり始め、午後3時過ぎに正式に避難所を開設するとさらに避難者は増え、約300人が不安な一夜を明かした。
秋田駅から500メートルほどの線路をくぐる明田地下道の目の前に住む美容師の女性は「15日午後3時ごろ、太平川下流域にある店に床上まで水が上がってきたので仕事を切り上げて帰宅。隣のアパートが停電し、うちのトイレも流れなくなったので、午後6時過ぎに、着替えと貴重品だけ持ってサンダルで1人で外に出た。東日本大震災のときに避難所となったアルヴェに向かって腰近くまで水に浸かりながら歩いた」と振り返る。
ずぶぬれのジャージーのズボンを着たまま乾かしたが「食事も飲み水も提供され、毛布も十分あってひと安心した。でも恐ろしくほとんど眠れず朝になった」という。
太平川の氾濫地点近くから避難したパートの女性(67)は「市が『高齢者等避難』を出した15日の朝のうちに自転車で来た。まもなく川が氾濫して、このあたり一帯も冠水した」と話す。
アルヴェでは当初、1階ホールを避難スペースにしたが「道路の冠水が玄関近くに迫って中まで入りそうだったので2階以上に移ってもらった」と担当者。
動けない車何台も
女性は「不安でほとんど眠れなかったが、今朝水が引いてからいったん帰宅して着替えを持ってきた。途中で水に浸って動けなくなった車を何台も見た。恐ろしい」と雨でぬれた髪を拭きながら打ち明けた。
太平川の氾濫地点近くの自宅で浸水した作業小屋の後片付けをする会社員の男性(62)は「祖父の代からここに住んでいるが、こんな水が出たのは初めて」と打ち明ける。
「この小屋が膝上まで浸水した。後片付けのために今日は仕事を休んだ。コンプレッサーが1台完全に水に浸かったのでダメかな。水は敷地が高い母屋近くまで迫ったが、今日の午前2時ごろに引き始めホッとした。でも結局一睡もできなかった」と疲れた表情で作業を続けた。
観測史上最大の豪雨となった秋田市では、河川氾濫や土砂災害への警戒は16日も解消しておらず、アルヴェでは同日午後6時時点で住民45人が避難を続けている。