「移植手配200件以上」
【イスタンブール=小峰翔】NPO法人「難病患者支援の会」(東京)と連携し、途上国など海外での臓器移植を進めていたトルコ人男性(59)は、取材に「ドナーの手配や金の支払いには一切関わっていない」と臓器売買への関与を否定した。自身の実績などは雄弁に語る一方、NPOとの金銭のやりとりを問われると「覚えていない」と繰り返した。
18日午後、トルコの最大都市イスタンブールのレストラン。ピンク色のポロシャツ姿で記者の前に現れた男性は、「日本で私は有名なのか? まず経歴から話そう」と余裕たっぷりに語り出した。
男性によると、移植医療に力を入れるトルコの病院で国際部門の責任者を務めていた2011年から、外国人患者を受け入れる「医療ツーリズム」に関与するようになった。臓器移植の手配・調整が主な仕事で、海外に講演に招かれることも多く、「私はトルコの臓器移植の宣伝を始めた最初の人間だ」と誇った。
14年頃に独立した後も活動を続け、「これまで200件以上の移植に関わり、多くの患者から感謝されている」と口にした。
NPO理事長の菊池 仁達 (ひろみち)被告(63)(公判中)と知り合ったのはコロナ禍の20年頃。21年4月にまずブルガリアで日本人患者2人の移植を実現させた。ブルガリアでは非親族間の臓器移植は認められていないが、ドナーはウクライナ人だった。臓器売買が疑われるが、男性は「ドナーについては知らない」と関与を否定した。
21年12月に行われた中央アジア・キルギスでの生体腎移植では、関西在住の日本人女性(59)が手術後に一時重篤となった。
男性は「トルコから医療機材を運び、エジプト人医師を連れてきた」と関与を認めた。「最終許可は出していないのに、手術が行われてしまった。設備が足りず、合併症への適切な管理ができなかった」と説明した。
手術の約1週間後、女性が目を覚ましたのは病室ではなくホテルの一室だった。これについて、男性は「病院のオーナーが、重篤になった女性がこのまま死んだら問題になると考え、ホテルに移した」とした。
女性が親族を通じて「病院で治療を受けたい」と申し出たのに対し、男性は「感染症にはかかっていない」として、入院は不要だと説明していた。だが、女性はその後症状が悪化し、帰国後すぐに腎臓を摘出する事態になった。
男性は女性について「手術の許可は出していないので、私には責任はない」と語った。女性はこうした発言について19日、「人の命と体を何だと思っているのか」と憤った。
「金持ちはドナーの身元を偽って臓器移植を受けている。死ぬのは貧しい人々だけだ。金がなければ、(手術を受ける)チャンスもない」。インタビューは約5時間に及んだが、男性は疲れた様子も見せずに語り続けた。
しかし、男性が違法な移植に関与した疑惑を指摘すると、口は急に固くなった。例えば、男性が菊池被告と昨年6月にオンラインで行った打ち合わせで、キルギスに渡航したものの手術を受けられなかった日本人患者3人分の「ドナー費用」計4万5000ドルについて協議したことを問うと、「覚えていない。信じてくれ、本当に覚えていないんだ」と繰り返した。
NPO理事長は公判で無罪主張
臓器あっせん事件では、臓器移植法違反に問われた菊池被告と、法人としてのNPOの公判が東京地裁で進んでいる。先月30日の初公判で、菊池被告は「仲介やあっせんはしていない」と無罪を主張した。
起訴状では、菊池被告は2021~22年、厚生労働相から臓器あっせん業の許可を得ず、日本人患者2人にベラルーシでの移植を提案。移植費用などとして計5150万円をNPOの口座に振り込ませ、同国の病院で肝臓と腎臓の移植を受けさせたとしている。この「ベラルーシルート」には、トルコ人男性は関与していなかった。
菊池被告は今月4日に保釈された際の取材でも「大勢の人の命を救ってきたのに、なぜ処罰されるのか。公判で無罪を主張する」と語った。