日本のサイバー防御、人材確保が課題「次官級待遇でも集まらない」…中国軍ハッカー侵入

中国軍のハッカーが防衛機密を扱う日本政府のコンピューターシステムに侵入していたと報じられ、サイバー攻撃に対する日本政府の 脆弱 (ぜいじゃく)性が浮き彫りとなった。政府は、サイバー領域における中国の動向への警戒を強め、法整備や人材確保を急ぐ考えだが、課題も多い。
米紙ワシントン・ポストによると、米政府は日本政府に不正アクセスの重大性も警告した。松野官房長官は8日の記者会見で、「米国とは平素から様々なレベルで緊密にやりとりしている」と述べた。
国内では、政府機関や防衛産業などへのサイバー攻撃が相次ぐ。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)でも、外部からの不正アクセスでメールアドレスなどが漏えいした可能性があることが判明。政府内では「中国による可能性がある」との見方が出ている。
中国は、3万人のサイバー攻撃部隊を持つとされる。台湾国防部は、中国軍が平時にサイバー攻撃の対象を把握し、有事に基幹インフラ(社会基盤)を破壊する計画を持つと分析している。台湾有事の際は、在日米軍などの活動を妨げるため、日本へのサイバー攻撃をしかけられる懸念がある。
政府は現在、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた法整備の検討を進めている。自衛隊は、サイバー専門部隊(2022年度末時点で約890人)を27年度末までに約4000人に拡充する見通しだ。
ただ、サイバー対策強化には、高度な能力を持つ人材が欠かせない。民間からの登用が必要になるが、政府高官は「次官級の待遇でもトップ人材は集まらない」と指摘する。官民の協力体制を築く観点からは、機微情報に触れる権限を付与する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」の整備も喫緊の課題だ。