今年4月の区長選をめぐり公選法違反の疑いで東京地検特捜部の強制捜査を受けた東京都江東区の木村弥生区長(58)は26日、同区役所で会見を開き、辞職の意向を示した。
現在も東京地検による事情聴取が続き「いつまでかかるか分からない」とし、「新年度予算編成など、これから重要な業務がある。これ以上、区政を混乱させてはならない」と説明。区長選で自身に投票した有権者らに「ご期待いただきながらこのような形で辞職することになり誠に申し訳ございません」と謝罪した。
捜査中を理由に、自身の関与や違法性の認識などについては回答を避けた。
区長選の期間中に、陣営が、公選法で禁じられている投票を呼びかけた有料広告をユーチューブに出したとして告発され、24日に特捜部が家宅捜索。捜索対象は実家や家族にも及んだ。25日朝、役所に電話をして副区長に辞意を伝えたが、その前に、江東区を含む東京15区選出の国会議員だった父の木村勉元衆院議員には進退を相談したという。
「父はまじめでクリーンに40年、政治生活をしてきた。私がこういう形で区長を辞任することがどれだけつらいかと思うと大変申し訳ないが、私が決めたことは尊重するということだった」と、話した。
ネット動画の問題以外には「何か疑いがあるわけではない」と強調した。「関心が(区政ではなく)区長の進退に行ってしまうことも1つの政治不信。せっかく投票してくださった方々が、どれだけがっかりするかを考えると切ないですし…大変切ないです」と、言葉を詰まらせた。今後は「一区民として地域の活動に貢献したい」と話した。
2021年10月まで務めた衆院議員時代、ネット選挙を管轄する総務省の政務官を務めたことがあるが「ネット選挙について専門的な知識を持つ国会議員だったわけではない」と釈明した。一方、区長選のさなかに問題となっている動画がアップされた際には「警察や選管からの指摘や注意はなかった」とも訴えた。
4人が出馬した4月の区長選は、自民系の木村氏と山崎孝明前区長の長男、山崎一輝元都議がともに出馬。2世同士による保守分裂の激戦となった。木村氏が山崎氏に1万3000票あまりの差で初当選し、江東区で初の女性区長となった。木村氏は会見後に辞職届を提出した。今後、出直し区長選が行われる。【中山知子】