2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、元法相の河井克行元衆院議員(60)=実刑確定=から現金30万円を受け取ったとして、公職選挙法違反(被買収)に問われた元広島市議の判決で、広島地裁は26日、求刑通り罰金15万円、追徴金30万円を言い渡した。弁護側は事件を担当した東京地検特捜部の検事による強引な取り調べがあり、違法な起訴だったと主張。裁判を打ち切る「公訴棄却」を求めていたが、判決は認めなかった。
元市議は木戸経康(つねやす)氏(68)。判決によると、現職だった19年4月3日、元法相の妻、案里元参院議員(50)=有罪確定=を当選させるための選挙運動の報酬と知りながら、現金30万円を元法相から受け取った。
「全く納得できない。どこに救いを求めればいいのか」。木戸経康被告は広島市内で記者会見し、判決への不満を訴えた。コメントを読み上げ、体調不良を理由に数分間で退席した。
東京地検特捜部の検事から9回にわたって聴取を受けた木戸被告。一連の聴取の途中から「自己防衛」のため、取り調べの様子を録音した。データは計約7時間分に上り、検事が「議員を続けていただきたい。そのレールに乗ってもらいたい」と持ちかけるやりとりが残されていた。
木戸被告はこの日、法廷で首をかしげながら判決に聴き入った。会見では「今でも検察による取り調べに恐怖がある。こうしたことがまかり通っていいのか」と訴えた。
会見に同席した弁護人の田上剛弁護士は、公訴棄却の訴えを退けた判決について「真正面から答えようとする気持ちがない」と批判。検察の捜査についても「見立てにこだわる捜査は改めるべきだ」と話した。
田上弁護士は今回の取り調べについて、適正な調査などを求める要望書を最高検に提出する考えも明らかにした。【安徳祐、井村陸】