岸田文雄政権の支持率が急低下している。きっかけは所得減税だ。日本経済がふるわない中での減税は最適な政策のひとつだ。だが、それがまったく国民に支持されていない。理由は簡単で、所得減税が「しょぼく、遅く」さらにもっと有効な手段(消費減税)があるのに財務省に忖度してやらないからだ。
「しょぼさ」は一回限り4万円で済ませようとしている点にある。その時の経済状況などお構いなしのお役所仕事のようだ。また、減税時期は来年の夏に予定されている。岸田首相のシナリオは、春闘で上がる予定の賃金の恩恵を、所得減税でさらに支えるというものらしい。
だが、減税で賃上げできる環境をまず生み出すことが重要だ。夏ではあまりに遅すぎる。かりに来年度予算を緊縮してしまえば、所得減税の効果はなくなる。
さらに日銀の金融政策も問題がある。岸田首相が任命した植田和男総裁は、「金融政策で景気が良くなるか分からない」とか「長期金利のコントロールは銀行などに悪い副作用を与える」などと総裁になる前は発言していて、国民生活目線の人ではない。むしろ金融業界の保護者だ。
その植田日銀は、総裁の念願だった長期金利のコントロールを事実上やめた。これは景気に水を差す可能性がある。
さらに日本銀行からのリーク問題がある。海外メディアでも問題視されている。前回と今回の金融政策決定会合の内容が、公表される前に特定のマスコミで報道されていた。そしてそのリークによって、為替レートなど資産価格が大きく変化した。日銀が公表するまで、政策内容を堅く守秘するのは、このような資産価格の変化を利用したインサイダー取引を防ぐためでもある。
そもそも特定メディアが事前に政策情報を流せば、日銀の信頼性そのものに傷がつく。植田総裁はじめ日銀幹部たちの「本音」は、特定のメディアや利害関係者だけに流される可能性があると思われるからだ。
この日銀のリーク問題は、黒田東彦(はるひこ)総裁体制時にはほぼなかった。だが、黒田日銀の前までは常態化しており、国会でも追及されたが、真相は藪の中だった。この点でも植田日銀は、日本をデフレ停滞に叩き落した「アベノミクス以前」の勢力に似ている。
日銀の情報セキュリティーは穴だらけだ。金融政策決定会合に出席する総裁はじめ各委員、政府出席者、そして事務方などの責任は甚大である。リークには、なんらかの罰則を導入する必要がある。また政策決定会合を現行の2日間から1日にすべきだ。その間、参加者は外部との接触を断つ。政府側出席者は官邸や官庁との連絡をするだけになる。これでもリークがあれば、政策の素案段階で漏れたか、政府側出席者が漏らしたかの二択になり、リークの「犯人」が明瞭になるだろう。(上武大学教授・田中秀臣)