3人死傷させた大千軒岳のクマ、自ら近づいて消防士を襲った“特異”なケース…エサとして大学生の遺体に執着、3月に札幌市で駆除のクマも同様

北海道南部の大千軒岳(標高1072メートル)で、登山中の大学生と消防士を襲い、死傷させたクマについて、専門家は「自ら消防士3人に近づき、襲いかかる特異なケースで、エサへの執着があった。3月に札幌市で駆除されたクマも同様の執着があった」などと指摘しています。
大千軒岳の6合目付近(標高550メートルほど)では、2日午後、函館市の北海道大学水産学部海洋生物科学科の4年生、屋名池奏人(やないけ・かなと)さん22歳が遺体で見つかりました。
屋名池さんは10月29日に登山、死因は全身に激しい損傷を受けたことによる出血性ショックで、近くで死んでいた体長1.5メートルほどのクマに襲われたとみられています。
この現場付近では、10月31日、登山の消防士3人もクマに襲われ、2人がけがをしましたが、その際、1人がナイフでクマの首などを刺し、撃退しています。
9日午前、クマを撃退した消防士も同行し、北海道と警察、それに道総研=北海道立総合研究機構の専門家らが現地に残されていた死がいを調べた結果、消防士のナイフによる首の刺し傷が気管、大動脈まで達し、致命傷になっていたことが判明しました。
大学生も同じクマに襲われたとみていますが、胃の内容物を調べた上で、最終確認することになりました。
今回、専門家が特に注目したのは、クマが消防士を襲った状況です。
北海道の武田忠義・ヒグマ対策室長らによりますと、クマは、いわゆる出合い頭ではなく、休息していた消防士に自ら近づき、襲いかかっていました。
若いオスグマは好奇心旺盛で、人に近づきやすい習性があるものの、今回は、大学生の遺体をエサと認識、執着し、近くに来た消防士を排除しようとしたとみられています。
武田室長は、ことし3月、札幌市南区白川で駆除された2歳のオスグマにも同様の執着があったと指摘…このクマは、近くにエゾシカの死がいを埋めていて、威嚇されても、ほとんど動こうとしていませんでした。
これからクマの冬眠まで、不測の事故を避けるため、くれぐれも注意が必要です。
9日の現地調査で判明したことなどは、下記のようになっています。
・頭の骨、歯、大腿骨、体毛を持ち帰る ・消防士がクマを刺したナイフは見つからず ・クマはオスで、体長1.25メートル、体高58センチ ・皮下脂肪は良好で、栄養状態は悪くない ・よくある出合い頭の事故ではなく、休んでいた消防士に自ら近づいて襲いかかる ・一般論としては、エサを守ろうとすると、積極的に攻撃するケースがある ・現場は、標高550メートルくらい ・死がいと大学生の遺体の距離は、30メートルほど ・巣穴はなく、別のクマの痕跡もない ・クマの胃の中の内容物を調べ、大学生との関係性を特定