《税金滞納の常習犯》 神田憲次財務副大臣にローン返済や滞納分の支払いを巡り、新たな税務上の問題が浮上 〈元国税徴収官が指摘〉

〈 「4500万円の貸付金が消えた!」 神田憲次財務副大臣に今度は資産公開法違反の疑い 〈税金滞納問題、税理士法違反疑惑、虚偽答弁疑惑に続き…〉 〉から続く
過去の税金滞納や税理士法違反疑惑を認めた神田憲次財務副大臣(60)が、ローン返済や滞納分の支払いを巡り、新たな税務上の問題が生じていることが、「週刊文春」の取材でわかった。
「 週刊文春 電子版 」は11月8日、神田氏が代表取締役を務める事実上の個人会社である「エヌケイソリューション」(名古屋市中区=以下、エヌ社)が所有するオフィスビルが、税金滞納によって名古屋市栄市税事務所から4度にわたり、土地・建物の差押を受けていた問題などを報道(神田氏は「(支払いを依頼した)友人が忘れていた」などと説明)。さらに、「週刊文春」は 11月12日夜配信のオンライン記事 で神田氏が国会で虚偽答弁をした疑いを、 11月13日朝配信のオンライン記事 では神田氏の資産公開法違反疑惑も報じた。
差押が国税ではなく地方税だった理由
その神田氏に、滞納問題を巡って新たな税務上の問題が浮上している。
そもそも、神田氏の個人会社であるエヌ社が名古屋市中区のオフィスビルをパソコン関連企業O社から購入したのは2012年1月のことだった。O社の当時のプレスリリースによると、譲渡価格は土地と建物をあわせて6800万円。エヌ社は購入資金を岐阜県の地方銀行からの借入によってまかなっていた。その後、同ビルの土地・建物は、2013年10月16日に約80万円の固定資産税・都市計画税の滞納によって、名古屋市栄市税事務所から差押を受けている。2014年6月4日には約120万円の滞納により差押。さらに、2022年8月23日にも約72万円の滞納で差押され、同年9月26日には参加差押も受け、解除されたのは2023年1月4日だった。
エヌ社の経営状況は厳しいと見られる。差押の対象になっているのは、「固定資産税・都市計画税」という地方税だけ。元国税局徴収部次長の中島洋二税理士が解説する。
「赤字の会社であれば、法人税は発生しないし、売上も1000万円以下であったら、消費税の課税対象にもならない。国税の差押がないのはこうした理由の可能性があります」
「議員のボーナスで滞納金を収めたのでは」
だが、エヌ社に営業実態がほとんどなく、テナントががら空きで、収入も見込めない中、銀行へ支払うローンの返済については、一体どうしているのか。神田氏は11月7日に「週刊文春」の質問状に対して、書面でこう回答していた。
「エヌケイソリューションの購入におけるローン返済は私が負担している状況です」
その後、神田氏は11月9日の参院財政金融委員会で、共産党の小池晃参院議員からの質問にこう釈明していた。
「滞納税金については、差押の事実が発覚した時点で、自己資金によって支払いました」
11月10日の衆院内閣委員会では、立憲民主党の本庄知史衆院議員から、差押解除のタイミングと、国会議員のボーナスの時期が符合することから、「金欠で議員のボーナスで滞納金を納めたのではないか」などと追及されていた。
これらの回答や答弁を総合すると、法人としての税金滞納や、銀行ローンなどについて、議員歳費を中心としたポケットマネーで支払っていると見られる。
神田氏は適正に税務処理をしているのか
だが、前出の中島税理士はこう指摘する。
「個人企業といっても法人と個人は別人格ですから、個人の収入でローン返済や滞納分を支払えば、会社としては現金の贈与を受けたということになり、その受贈益は法人税の課税対象となる。果たして、エヌ社はそうした処理をしているのか。仮に貸付金扱いとすれば、もちろん法人税は課税されませんが、いずれにしても適正な税務、会計処理が必要です」
ビルの購入価格から推定すると、貸付金として処理をしていた場合、その総額は数千万円に及ぶと見られる。だが、毎年の所得報告や政治資金収支報告書に記載されている貸付金の額は、ローン返済の額には充たず、その可能性は低いと見られる。すなわち、神田氏のポケットマネーをエヌ社側に贈与している可能性が高いのだ。
果たして、神田氏は適正な税務処理をしているのか。事実関係の確認を求める質問状を送付したが、11月13日昼時点で回答は届いていない(届き次第、追記する)。日本の税制を司る財務副大臣として説明責任が厳しく問われている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春)