北海道の女子高校生殺害、被害者を欄干に座らせ「背中を内田被告が押した」…公判で仲間側が主張

北海道旭川市・神居古潭(かむいこたん)地区の神居大橋で昨年4月、留萌市の女子高校生が石狩川に転落させられて溺死した事件を巡り、殺人罪や監禁罪などに問われた被告の女(20)の裁判員裁判が27日、旭川地裁で始まった。起訴事実を全面的に認めたが、弁護側の冒頭陳述には事件の根幹に関わる指摘が含まれている。転落の直前、被害者の背中を押した人物がいる――。(高橋剛志、岡絃哉)
昨年4月19日午前3時29分。女と「姉貴分」の内田梨瑚(りこ)被告(22)(殺人罪などで起訴)、被害者の女子高生(当時17歳)が小雨にぬれる神居大橋に到着した時、周囲の気温は6度にも満たなかった。
SNSの投稿を発端に両被告から執拗(しつよう)な暴行を受け、全裸で橋の欄干に座らされる。もはや抵抗する気力もなく、両被告から「落ちろ」「死ねや」と迫られているうちに転落した。
これが検察側の主張する殺人事件の経緯だ。つまり、「両被告が直接手を下したわけではなかった」ということになる。
対する女の弁護人は冒頭陳述で、内田被告が橋の外側に足を出す格好で座るよう女子高生に命じ、女も二の腕などを押したと説明。そして、こう続けた。「内田被告が背中を押し、被害者が欄干から落ちた。(女は)ロープをつかんでいた被害者を引っ張り上げようとしたが手が届かず、そのまま転落していった」
冒頭陳述の手続きは、検察側と弁護側がそれぞれ「今後の審理で立証する事柄」を裁判官と裁判員に説明することを目的とする。
転落直前の3人の動きについて、弁護側はどのような根拠を示すのか。検察側はどう反撃していくのか。襟つきの白色シャツと紺色のズボンという服装で出廷した女は、うつむいてまばたきを繰り返しながら双方の冒頭陳述に耳を傾けていた。
証人尋問に内田被告出廷へ、証言拒否の公算大

女の公判は今後、28日に証拠書類の取り調べ、3月3日に証人2人の尋問、4日に被告人質問という日程で進む。検察側の論告求刑と弁護側の最終弁論は5日、判決の言い渡しは7日午後3時に予定されている。
3日の証人尋問には、検察側の請求で内田被告が出廷する。「内田被告が被害者の背中を押した」という女の言い分のみに依拠して事実認定が行われれば、内田被告にとって過度に不利な内容の判決になりかねないためだ。
検察側の「公益の代表者」としての配慮とも言えるが、内田被告の弁護人は「弁護士のバックアップを得られない中で発言することには大きなリスクがある」と指摘する。このため、当日は一切の質問に答えず、尋問開始前の「虚偽を述べない」という宣誓文の朗読も拒否するという。
内田被告が尋問を拒んだ場合、検察側は刑事訴訟法の規定に基づき、捜査段階の供述調書の証拠採用を求める公算が大きい。裁判所が採用すれば、法廷で検察官が調書の要旨を朗読することになる。
内田被告は弁護人に「被害者が落ちる前に橋から離れており、転落の瞬間は見ていない」と説明している。内田被告の公判日程は決まっていないが、殺人罪などの成立を争う方針だという。