「数学のノーベル賞」ともいわれ、数学分野で最も権威ある賞の一つ「アーベル賞」の受賞が決まった京都大の柏原正樹特任教授(78)が27日、京大で記者会見した。代数解析学の発展につながる「D加群」の理論構築が評価されたことや日本人初の快挙に「多くの共同研究者に恵まれ、助けを借りて賞をいただけた」と謙虚に喜びを語った。
紺色のスーツ姿で会見に臨んだ柏原氏。受賞の一報は先週届いたとし、「本当にびっくりした」と振り返った。
東京大在学中に代数解析学の創始者、佐藤幹夫氏に師事。以来、50年超にわたって数学の難解な問題に向き合った。「佐藤先生の元で、一方向から考えるのではなく、常に創造的であることがいかに重要かを学んだ」。
研究成果は現在、物理学などの分野で応用されており、柏原氏は「研究全体への評価となることが非常にうれしい」とほほ笑んだ。
会見に同席した京大の北川進副学長は、受賞について「学生や若手、中堅研究者を鼓舞する」と功績をたたえた。京大高等研究院の森重文院長も「学生時代から尊敬できる先輩。代数や幾何という数学の分野にとらわれない自由な発想が素晴らしい」と賞賛した。
アーベル賞は2002年に創設。数学者らで構成されるアーベル委員会の推薦に基づいて03年から毎年贈られている。