防衛省は10日、2024年度に領空侵犯の恐れがあるとして航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)したケースのうち、中国の無人機が30機(推定を含む)確認されたと発表した。中国は台湾への軍事的な威圧などを念頭に、日本の南西諸島周辺で無人機による活動を活発化させているとみられ、日本最西端の与那国島(沖縄県)と台湾の間を飛行することが多かった。
防衛省によると、日本周辺で中国の無人機を初確認したのは13年度で、この年は1機だけだった。その後は17、18年度に1機ずつを確認。21年度に4機を確認して以降は増加傾向となり、22年度が10機、23年度が9機に上った。24年度は前年度の3倍超、30機に急増した。
飛行エリアは、尖閣諸島(沖縄県)周辺の東シナ海から太平洋へと広がり、23年度には日本海でも初めて確認された。領空侵犯の確認は17年度の1回。尖閣諸島周辺の領海に侵入した中国海警局の船から発進した小型無人機とみられる物体によるものだった。
無人機に対して航空自衛隊は、有人機によるスクランブルで対応。飛行速度や機動性は無人機より優れているものの、搭乗者のリスクやコストを考慮すると「非常にアンバランス」(防衛省幹部)とされる。中国の無人機はこれまでに6機種が確認され、その半数が偵察能力に加えて攻撃能力も備えているとみられる。
制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長はこの日の定例記者会見で「(中国の無人機は)試行的飛行から運用体制に入ったのではないか」との見方を示し、対領空侵犯措置について「現場において不断に改善を図っている。将来的には無人機への措置は無人機で行うことも検討する必要がある」と述べた。【松浦吉剛】