機長「看護師を助けるだけで精いっぱいだった」 長崎・壱岐ヘリ事故

医療搬送用のヘリコプターが長崎県・壱岐島沖で転覆して6人が死傷した事故で、海から回収後に船で運ばれていた機体が10日朝、佐賀県唐津市の唐津港に到着し、陸揚げされた。機体は前面の窓が激しく割れ、メインローター(主回転翼)が全て折れた状態で、国の運輸安全委員会の航空事故調査官は報道陣の取材に「右に傾きながら着水し、横転した可能性が高い」との見方を示した。
また、救助された機長(66)が着水後の状況について「波が高かった。整備士と一緒に機体の外に出て、手前の席の人からシートベルトを外して助けようとしたが、看護師を助けるだけで精いっぱいだった」と説明していることも新たに判明。機長は背中を圧迫骨折したという。関係者が毎日新聞の取材に明らかにした。
ヘリは、運航していたエス・ジー・シー佐賀航空(佐賀市)が依頼したサルベージ会社の作業船によって9日に回収され、10日午前8時ごろ、報道陣が集まる唐津港に着岸。陸揚げされた後、唐津海上保安部が実況見分し、航空事故調査官も機体の状況を確認した。
航空事故調査官は機体の損傷から、機首を上げて右側に傾きながら着水し、回転中のメインローターが海面に接触した可能性が高いと説明。接触時の衝撃でメインローターは全て折れ、それが機体前面の窓に当たり、破損したとの見方を示した。着陸時に地面に接する脚となるスキッドと呼ばれるパーツの右側が切断され、機体全体がゆがんでいた。
機長が事故当時、緊急着水する際に使用するフロート(浮き具)を自ら作動させていたことも踏まえ、「不時着水を試みたが安全に着水できなかったのだろう。(機体に)かなりの荷重がかかったと思われる。不時着水か墜落かは今後の審議で決めたい」と話した。
第7管区海上保安本部などによると、ヘリは長崎県・対馬空港を6日午後1時半に離陸し、午後5時過ぎに壱岐島沖の海上で転覆した状態で見つかった。フロートにしがみついていた機長と整備士(67)、看護師(28)は命が助かったが、機内から救助された患者(86)や医師(34)ら3人は死亡した。【川畑岳志、成松秋穂、金将来】