天皇陛下は2日、モンゴルへの公式訪問(6~13日)を前に皇居・宮殿で記者会見された。「(訪問を機に)特に若い世代の人々の交流が活発になり、両国間の橋渡しとなって友好親善関係がさらに深まっていくことを期待する」と述べた。戦後に旧ソ連に抑留され、モンゴルで亡くなった日本人の慰霊碑に供花する予定で「心ならずも故郷から遠く離れた地で亡くなられた方々を慰霊し、ご苦労に思いをいたしたい」と話した。訪問には皇后雅子さまも同行する。
モンゴルでは約1万4000人の抑留者が強制労働に従事し、約1700人が亡くなったとされる。抑留者は今も残る政府庁舎や劇場の建設に携わった。陛下はこうした歴史や、現地で孤児院を運営した抑留体験者と過去に交流したことを踏まえ「極寒の地で建設に携わった人々の苦難に思いをはせたと記憶している」と述べた。
陛下は今年、硫黄島、沖縄、広島を訪ねて戦没者を慰霊し、戦争体験者から話を聞いた。戦後80年を「人々の苦しみや悲しみを決して忘れてはならない年」と表現。「想像を絶する苦難の一端に触れ、深く心が痛むとともに、平和の大切さについての思いを新たにした」と語った。
日本中世史の研究を続ける陛下は、両国の歴史をモンゴル帝国(元)による2度の日本侵攻である13世紀の元寇(げんこう)から振り返った。「襲来、合戦といったマイナスのイメージがあるが、禅宗の僧侶が相互に行き来するなどの交流も活発だった」と説明。モンゴル帝国を築いたチンギス・ハンが日本で英雄として小説になり、源義経との同一人物説もあることを紹介し「歴史研究でも縁を感じている」と話した。
陛下は皇太子時代の2007年、国交樹立35周年にあわせてモンゴルを公式訪問した。雅子さまにも当時の体験を話しているといい「大自然や歴史、文化にじかに触れ、モンゴルの方々と交流できることを楽しみにしている」と期待した。【山田奈緒、高島博之】