参院選が公示された3日、各地で第一声を上げた与野党党首の動きからは、各党の戦略や思惑がにじんだ。
石破首相(自民党総裁)は神戸市内で第一声を終えると、車で慌ただしく大阪・関西万博の会場(大阪市)に向かった。日本が記念イベントを催す「ジャパンデー」に出席するためで、首相は式典で「一緒に未来を創っていく確かな姿が、皆さんの目に映っているはずです」と語りかけた。
自民は2011年の東日本大震災後、ほぼすべての大規模国政選で福島県で第一声を上げた。復興支援に取り組む姿勢を打ち出すためだが、今回は選挙運動と公務の両立を図り、阪神大震災が直撃した神戸市を選んだ。
13人が出馬する兵庫選挙区(改選定数3)は、自民と連立を組む公明党も議席を争う。公明の斉藤代表は首相の第一声の場所と16キロ・メートルほど離れた同市内の地下鉄駅前で、「全国一の激戦区。ここしか第一声の地はない」と声を張り上げ、両党トップが同じ選挙区で重なる異例の展開となった。
立憲民主党の野田代表は10党で唯一、九州に飛んだ。稲などが青々と茂る宮崎県国富町の田園の中でマイクを握ると、「来てよかったなと思います。国富から日本を変えよう」と力を込め、コメ価格高騰を巡る政府の対応を厳しく批判した。保守地盤が強い九州の切り崩しを図る戦略で、立民関係者は「他の党首が都心部を選ぶ中、田畑をバックにして違いが際立った」と語る。
日本維新の会は本拠地・大阪での票固めを狙う。吉村代表は大阪市内の百貨店前で「本当に地方のことを考えてやっていく政党は維新だけだ」と訴えた。
国民民主党やれいわ新選組などの党首は、いずれも東京都内でマイクを握った。勝敗を左右する無党派層の取り込みを狙う作戦だ。サラリーマンが行き交う、JR新橋駅前で演説した国民民主の玉木代表は、結党当初もこの場を選んだとして「私たちの原点の地と言っていい」と力を込めた。