公務員の立場を利用して親族の個人番号(マイナンバー)を不正に入手したとして、埼玉県警は10日、同県所沢市職員の男(31)(東京都八王子市)をマイナンバー法違反(職権乱用収集)容疑で逮捕した。マイナンバーを使って扶養に入っていない親族を確認し、自身や妻の扶養家族として市に申請していたという。延べ40人以上を申請していたといい、県警は所得税の控除などを受ける目的だったとみている。同法の職権乱用収集を適用した事件の摘発は全国で初めて。
発表によると、男は2023年2月27日~3月23日、市役所の住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)にアクセスし、7都府県に住む30~90歳代の親族14人のマイナンバーを不正に入手した疑い。当時、税を担当する部署に所属し、住基ネットの専用端末にアクセスできる権限を持っていたという。
男は14人の扶養状況や収入などを把握した後、扶養に入っていない親族を自分や妻が扶養しているように偽って申請し、所得税の控除を受けるなどしていた。逮捕前の調べに「生活が苦しく、お金がほしかった」などと話したという。市は24年11月、男がマイナンバーを入手していたことを知り、県警に相談していた。
住基ネットを運営する「地方公共団体情報システム機構」(東京)によると、自治体職員が住基ネットにアクセスしてマイナンバーを確認するには、対象者の氏名や生年月日といった個人情報が必要になる。県警は親族が暮らす自治体に何らかの手段で照会して個人情報を得ていたとみている。
マイナンバー法では、国や地方自治体の職員らが職務で使わない個人情報の収集を禁じており、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される。