体育祭や文化祭といった学校行事で着る「クラスTシャツ(クラT)」を巡る注文トラブルが相次いでいる。高校生らから「商品が届かない」「税関に没収された」といった相談が全国の消費生活センターに年間数十件規模で寄せられている。国民生活センター(東京)は秋の行事シーズンに向け、商標権などに注意しつつ、信頼できる業者を選んで発注するよう呼びかけている。
「文化祭で使うTシャツを注文したのに届かない」。昨年10月、南関東の消費生活センターに女子高校生から相談が寄せられた。学校にあったパンフレットから選んだ業者にクラT34枚を1枚2千円で注文したが、文化祭当日まで届かなかったという。注文などに使ったLINE(ライン)で何度も業者に連絡したが、返事はなかった。
国民生活センターによると、クラTは生徒がデザインや色を決めて発注するのが一般的で、学校側が把握していないケースも多い。生徒が業者とラインなどでやりとりし、電話番号などの確実な連絡先を把握していないと、業者に問い合わせることが難しく、トラブルにつながりやすい。
消費者庁は令和4年10月、クラTの納品遅れなどが相次いだ横浜市の業者名を公表して注意を呼びかけたが、その後もトラブルは絶えない。同センターの担当者は「正確な集約はできていない」としつつ、ここ数年は全国の相談窓口に年間数十件ほどの相談が寄せられていると明かす。
実在ロゴはダメ
甲信越地方の窓口には昨年7月、体育祭に使うためクラT39枚を1枚2500円で注文したが、「税関で没収された」との理由で納品されなかったとの相談も高校教員からあった。未納のまま1枚千円の原価代まで請求されたと訴えたが、教員は業者のカタログから有名サッカーチームのロゴ入りデザインを選んだとも説明したという。
現存するスポーツチームや企業のロゴを無断使用する場合、「コピー商品」として知的財産権を侵害する恐れがある。同センターは「海外から発送される場合は税関で没収される可能性もある」と警鐘を鳴らす。
発注シーズン
県内に高校が三十数校ある徳島県でも、毎年のようにクラTの注文トラブルが起きている。県消費者情報センターによると、高校生らからクラTの未納や支払いに関し、4年度に2件、5年度に3件、6年度に2件の相談が寄せられたとし、県は独自の啓発チラシを作成して注意を呼びかける。チラシでは、業者の住所や連絡先、キャンセル料金を確認することや、実在のチームや企業のロゴは、正規品以外は絶対に注文しないことなどのチェックポイントを挙げる。
生徒たちがイベントでクラTを着て一体感を共有しようと準備を進めながら注文トラブルが起きれば、「お祭り気分」は消え、費用面の損失も決して小さくはない。県の担当者は「文化祭や体育祭は秋の開催が多く、今がクラTの発注を始める時期。トラブルに巻き込まれないよう高校などに啓発したい」と話している。