記録的な猛暑・少雨がコメどころ直撃…ダム貯水率0%、水田ひび割れ「収穫は減るだろう」

今夏は記録的な猛暑、少雨となっている。月平均気温は2か月連続で過去最高を更新し、熱中症患者も増加。「コメどころ」の東北や北陸では、少雨による水不足も重なり、農作物の生育に影響が出始めている。貯水率が0%のダムもあり、国や自治体は節水への協力を呼びかけている。
「6、7月と連続で過去の統計を塗り替えた、異常な気温と言える」。気象庁の担当者は1日、今夏の記録的な暑さをそう強調した。
同庁によると、過去30年と比べた6、7月の月平均気温はいずれも過去最高を更新。7月の猛暑日(35度以上)の地点数は延べ4565か所に上り、比較可能な2010年以降で最多となった。
熱中症患者も増加している。総務省消防庁によると、6月の熱中症の搬送者は1万7229人に上り、調査を開始した10年以降で最多を更新した。
猛暑の一方で雨は記録的に少ない。気象庁によると、高気圧が張り出して雨雲が発達しにくかった影響で、7月の降水量は平年の半分以下の地域が多く、特に東北日本海側と北陸地方はそれぞれ平年の13%、8%にとどまった。
「今年の収穫量は減ってしまうだろう……」。山形県朝日町のコメ農家(49)はひび割れた田んぼを前にため息をつく。水田約7ヘクタールで県産品種「はえぬき」などを栽培しているが、7月半ばから雨がほとんど降らず、水不足で一部の稲の葉先が茶色く枯れ始めてきた。毎日、約1・5キロ離れた水路からポリタンクで水をくみ、散水しているが「どこまで食い止められるか」と不安を見せる。
農林水産省は水稲の生育への影響が懸念されることから、7月30日に渇水・高温対策本部を設置。ポンプ設置の費用などを補助する。
東北や北陸ではダムの渇水も深刻だ。国土交通省によると、7月31日時点で御所ダム(盛岡市)、鳴子ダム(宮城県大崎市)で最低水位を下回り、貯水率0%となっている。新潟県の正善寺ダム(新潟県上越市)も12%に低下している。
1市2町に農業用水を供給する鳴子ダムでは、稲の出穂期のため残る水も緊急的に放流している。東北地方整備局鳴子ダム管理所の担当者は「このまま雨が降らなければ、約2週間で完全に枯渇する」と話す。
国交省は7月30日、渇水対策本部を設置し、渇水に見舞われている地域の住民に、節水への協力を求めている。同省によると、北海道から中国地方にかけた15水系19河川で取水制限などの渇水対策を行っている。
今夏の猛暑について、中村尚・東京大名誉教授(気候力学)は「地球温暖化の影響も含め複合的な要因で起きている」と指摘。太平洋高気圧が勢力を強めて偏西風を北に押し上げている影響で、北日本ほど顕著に気温が高くなっているといい、「この夏の間は状況が大きく変わることはないだろう」とみる。気象庁も「8月も厳しい暑さになる」との見通しを示す。
一方、8月の降水量について同庁は、少雨の地域では平年並みか平年を上回ると予想する。ただし「これまでの少雨を解消するほどには至らない可能性がある」とし、水の管理に注意するよう呼びかけている。