参院選後初の国会論戦となる4日の衆院予算委員会の集中審議で、石破首相は企業・団体献金の見直しや物価高対応を巡り、立憲民主党の野田代表の提案を受け入れ、協議に応じる姿勢を示した。参院でも少数与党となったためだが、自民内では首相の唐突の方針転換に困惑が広がっている。(谷川広二郎、伊福幸大)
「公明党と国民民主党が(献金を受領できる)政党支部を限定する案を出しており、これを軸に落としどころを協議しないか」
企業・団体献金の見直しに関し、野田氏が衆院予算委でこう呼びかけると、首相は「そのようにさせていただきたい。どうすれば各党に不公平が生じないか、党首同士で話をさせていただきたい」と応じた。
企業・団体献金の存廃議論は、自民派閥の政治資金規正法違反事件が発端だ。与野党は3月末に結論を得ることで合意したが、存続を訴える自民と、禁止を主張する立民や日本維新の会などとの溝が埋まらず、先の通常国会では結論を得られなかった。
公明・国民民主両党の案は、献金を受領できる政党支部を都道府県連に限定する内容だ。自民はこの規制強化案に反対の立場だったが、首相はこの日、自民の支部は7000以上に上ることに触れ、「多すぎるという議論は丁寧にさせていただきたい」と述べた。野田氏は「比較第1党(自民)と第2党(立民)が協議し、他党にも賛同を呼びかけるのがあるべき姿だ」と首相の答弁を評価している。
首相は、物価高対策でも野田氏の提案を次々受け入れる考えを示した。
ガソリン1リットルあたり25・1円が上乗せされている暫定税率の廃止について、野田氏が年内実施を「確約してほしい」と求めると、首相は「全力で努力したい」と語った。中低所得者向けに所得税の控除と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」に関する与野党協議の提案には、首相は「その通りにしたい」と足並みをそろえた。
もっとも、自民内で「石破降ろし」の動きは続いており、首相が応じた政策の実現可能性を疑問視する見方も出ている。
首相が懇意にする野田氏との息の合ったやり取りに、ある閣僚は「首相と野田氏は地下水脈でつながっているのだろう」と不信感を募らせた。首相が企業・団体献金の規制強化に応じる可能性を示唆したことに党幹部の一人は「聞いていない」と驚きを隠さず、党関係者は「なぜ勝手に決めるのか」と不快感をあらわにした。