石破首相が言い出した「比較第一党」は自民党分裂→政界大再編への布石か 立憲・野田代表との気になる会話

2025年8月8日の自民党の両院議員総会は、再び「石破退陣」を求める声が多かったが、石破茂首相は続投することに。どうやら、石破氏の「責任追及」をすればするほど「自民党の問題点」として世間の批判がかえってくるという構造に、議員たちは気づき始めたようだ。一方で、参院選大敗直後の記者会見で、「比較第一党」という耳慣れない言葉を4回も連発した首相は、国会質疑で、立憲民主党らとの「大連立」も臭わせる動きも見せる。まさかの「自民党分裂~政界大再編」の憶測も呼びながら、政局はお盆休戦へ。
「比較第一党」を4連発の首相記者会見
「比較第一党」。日本の国会では、聞きなれない言葉だった。それが、石破首相の口から、なんと参議院選の自民大敗が決まった7月21日の記者会見だった。過半数ではないが、国会で最大の議席を持つ政党のことだ。戦後、自民党を最大政党として社会党との二大政党時代が長かった日本では、多党制の欧州議会とは違って耳慣れない言葉だった。
それが、30分の記者会見で4回も飛び出した。
首相の目標だった「与党過半数」が達成できなかったから、「退陣表明」の「言い逃れ」だと確信した記者団は、「責任は?」と追及したが、首相は「続投」を明言した。
ただ、今回の参議院選で11党が議席を獲得するなど「多党化」が進む中で、欧州の情勢に即した(多党)連立時代をにらんだ発言とも思われた。
28日の両院議員懇談会では、4時間余りにわたって「石破やめろ」の声が吹き荒れた。終了後に石破氏は「果たすべき責任は果たしたい」と、再び、続投の意思を示した。
石破・野田の間に何かあったのか?
「スリーアウトチェンジの状態だ」などと「石破降ろし」はなお続いたが、微妙に空気が変わったのが、8月4日の予算委員会での野田佳彦・立憲民主党代表との質疑だった。
野田氏はいきなり「企業団体献金」の議論を持ち出し、「比較第一党と比較第二党が真摯に協議して結論を得る」「私と総理でひざを突き合わせて合意していく。そういう作業をする気はありませんか」とたたみかけた。首相も、「第1党、第2党が党首同士で真摯な議論をすることには大きな意味がある」と応じた。課題は、「給付金、給付付き税額控除」や与党含めた6党で協議が進む「ガソリン暫定税率」「戦後80年談話」まで続いた。
2人の親密さを知る与野党の議員らには「何か相談している?」と観測が広がった。
同じ1957年生まれの2人は、90年代に「新進党」に所属したことがある。今年初めのラジオ番組で、石破は、日本維新の会共同代表(当時)の前原誠司と出演した中で、野田の名前を挙げて「中道政治を目指す意味で相通ずるものがある」いよいよとなれば、「大連立は選択肢としてあるでしょう」(朝日新聞)と語った。大騒ぎになったが、野田氏は、現時点での大連立の可能性を強く否定、首相周辺も火消しに追われた。
自民党内にひろがる微妙な空気
与野党は「ガソリン暫定税率の廃止」法案の財源などの協議を、お盆あけにも続けるが、自民党内は決して「石破おろし」ばかりでもない、「微妙な空気」も広がっている。
「旧安倍派4幹部」が会合をして「石破退陣」を求めたり、「派閥単位」で「退陣署名集め」が広がると、かえって自民党批判も広がった。そのなかで、「いったん政権を返上した方がいい」との「下野論」も一部議員から出た。このうちの一人、古川禎久元法相は、「急場しのぎの(連立)筏」として「保守中道の集結」(週刊新潮8月14・21日号)を提案、党内に話題を呼んでいる。「極右と極左はちょっと遠慮願いましてね」。
もとより、大連立も「中道連立」も簡単には進まない。しかし、不気味に突進する石破内閣の支持率は、4日前ではじわり4ポイント上がっている(JNN調査)。
今回の両院議員総会で出た「総裁選前倒し論」や、6日(広島)9日(長崎)15日(敗戦記念日)の首相あいさつを聞いて、世論はどう反応するか。一方で、「自民党内の保守派や、参議院選挙で躍進した参政党はどう出るか」。
「石破首相は、辞めない一本やりでいったい何を考えているんだろう」と思っていたが、暑い夏が終わるころに、何かが見えてくるかもしれない。
(ジャーナリスト 菅沼栄一郎)