1か月分の雨量の1・8倍降った金沢の会社専務「お盆なのに…」、能登町の男性「またか」

石川県内は7日、大気の状態が不安定になった影響で、記録的な大雨に見舞われた。同日午前5時前には加賀地方で線状降水帯が発生。金沢市では午後3時までの24時間降水量が観測史上最大の331・5ミリとなり、平年8月の1か月分(179・3ミリ)の1・8倍が1日で降った。6日から7日にかけて、同市や輪島市、津幡町など5市町計約7万5000世帯に避難指示が出された。(荒牧尚志、阿部友志、平松千里)
1日で1か月分の1・8倍の降水量

金沢地方気象台によると、同日の24時間降水量の最大値は、宝達志水町で197・0ミリ、かほく市で181・0ミリ、珠洲市で151・0ミリなど。県によると、能登町や白山市など5市町で少なくとも住宅161棟が床下浸水した。
金沢市では大徳川など4河川が氾濫して33か所で道路が冠水し、市が住宅被害の全容把握を急いでいる。金沢東署によると、同日午前9時頃、同市今町で、浸水したトラック2台と乗用車1台から男性計3人を署員らが救助した。
床下や倉庫が浸水した金沢市近岡町の食品製造会社「和食」の専務(45)は「30年ほど前から事務所を置いているが、こんな浸水は初めて。お盆前の繁忙期なのに」と途方に暮れていた。
新幹線31本運休…12市町42か所に避難所

JR西日本金沢支社によると、北陸新幹線は午前7時20分頃から長野―金沢駅間で約5時間半運転を見合わせ、上下線計31本が運休、約2万8000人に影響した。北陸鉄道浅野川線は一部で線路が浸水し、午後6時までに上下線計19本が全区間で運転を見合わせた。
7日午前8時時点で12市町の42か所に避難所が設置され、金沢市では同日正午頃に最大264人が避難した。家族5人で大浦小学校の避難所に身を寄せた高校教諭の男性(48)は「1泊できる用意はしてきた。外は膝下まで水があるのでもう少し様子をみたい」と話した。同小周辺は雨がやんだ後も水が引かず、小学生を含む4世帯12人は8日まで滞在を続けるという。
8日も地域によっては雨が降る見込みで、同気象台は大雨で地盤が緩み土砂災害の危険性が高まっているとして、引き続き注意を呼びかけている。
被災地・能登「こんな水位初めて」

能登半島地震で地盤が沈下した能登町宇出津地区では、7日の低気圧と大雨の影響で道路や住宅に水が流れ込み、被害が広がった。
同地区の焼き肉店「精香園」は30センチほど浸水し、この日の営業を取りやめた。店主の男性(55)は「満潮の際に店内に水が入ることはあったが、こんなに水位が上がったのは初めて。この時期は地区に帰ってくる人も多いのに営業ができず申し訳ない」と肩を落とした。
海の近くに住む同地区の塗装業の男性(54)は「これだけの大きな浸水被害は昨年の大雨以来で、またかという感じだ。今日は仕事もできない」と下を向いた。