機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警視庁の鎌田徹郎副総監と最高検の小池隆公安部長、東京地検の市川宏次席検事が25日、勾留中に判明した胃がんで亡くなった同社元顧問相嶋静夫さん=当時(72)=の遺族に直接謝罪した。
鎌田副総監ら3人は午前10時半すぎ、相嶋さんが眠る横浜市内の霊園を訪れ、相嶋さんの妻(77)と長男(51)、次男(48)と面会。墓前に順次ひざまずき、手を合わせた。
鎌田副総監は「違法な捜査を行ったことを深くおわびする」、市川次席検事は「違法な勾留請求、公訴提起で重大な人権侵害を生じさせ、保釈請求に対する不当な対応で相嶋様の治療の機会を損失させ、心よりおわびする」と頭を下げた。
相嶋さんの妻は「謝罪を受け入れますが、許すことは決してできません」と応じた。遺族が捜査当局の謝罪を受け入れるのは初めて。警視庁と最高検が7日、捜査の問題点などをまとめた検証報告書を公表したことを踏まえた。
謝罪後、双方は非公開で1時間ほど面談。その後記者会見した相嶋さんの長男は「検証も不十分で、再発防止策もぬるい。(当局は)極めて曖昧に収束を図ろうとしている。父の命を奪った責任を明らかにしてほしい」と話し、第三者を入れた再検証や処分の見直し、相嶋さんを起訴した検事らの辞職を求めたと明かした。
相嶋さんは2020年3月、同社社長らと共に警視庁公安部に逮捕され、その後起訴された。勾留中に胃がんが見つかり、起訴取り消し前の21年2月に亡くなった。警視庁と東京地検の幹部が今年6月、社長らに直接謝罪したが、相嶋さんの遺族は応じていなかった。
検証報告書で警視庁は「組織として捜査の基本に欠けるところがあった」と総括。最高検も「消極証拠の確認や実態の正確な把握が不十分だった」と結論付けた。 [時事通信社]