「よそ者が山を壊していて許されへん」太陽光パネルに囲まれた古墳も…奈良の自然と景観を脅かす“メガソーラー開発”に住民が怒りの声

メガソーラー建設が進む釧路湿原は太陽光パネルの“黒い海”に覆われ、希少生物の命が脅かされている。だが惨状は釧路にとどまらない。「再生可能エネルギー」の仮面の下で各地の故郷が潰される現場を取材班が追った。 ◆造設現場で盛り土が崩落「いつか大惨事になる」 奈良県でもメガソーラーをめぐる紛糾が続く現場がある。山下真県知事は五條市の県有地に25haの大規模太陽光発電所を整備する構想を発表したが、県議会や地元住民の強い反発を受けて、今年1月に断念。パネルの敷地面積を大幅に縮小すると方向転換した。 このように計画が止まる事例もあるが、開発が強行されてしまう場所もある。 奈良県北西部にある平群町には、一度も伐採されたことがない自然林に5万枚超のパネルを敷設する計画が進んでいる。 今年の5月、雨により造成地の盛り土が崩落したその場所だ。取材班が山道を行くと突如、現場が現れる。 「急勾配に雨水の排水路を造ったことで、一気に水が流れ出して土堰堤が崩壊。土砂が町路まで流出しました。もし車が通っていたら大惨事でした」 ブルーシートで覆われた崩落箇所を指差しながら憤るのは、「平群のメガソーラーを考える会」の代表を務める須藤啓二さん。 1級土木施工管理技士の資格を持つ須藤さんは事業者の工事設計に疑問を覚え、県に提出した書類を調べると、杜撰な内容だった。 ◆数値改ざんに産廃が混入した盛り土… 「事業者は開発を急ぐあまり造成地の勾配の数値を改ざんし、林地開発許可を取得した。しかし、工事が杜撰で、仮設調整池の容量不足などにがり、崩落が起きました」 今年1月、地元住民は事業者を相手取り、工事の差し止めと県に対して林地開発許可の取り消しを求めて提訴。しかし3月、奈良地裁は住民の訴えを退けた。 平群町に40年暮らす男性は「よそ者が山を壊していて許されへん」と怒りをあらわにする。そのなかで今年8月、初めて事故現場を視察した須藤さんは新たな問題を突き止めた。 「工事業者は、産業廃棄物が混ざった土を盛り土に利用していたんです。自然破壊レベル以上の蛮行。危険性も高いので、盛土規制法で調査すべきだと県に訴えています」 11月には、再び開発許可の取り消しを求める控訴審が始まる。県の誠意ある対応が見られない場合には、事業者を廃棄物処理法違反で刑事告訴することも検討中だという。 ◆パネルに囲まれた古墳「管理放棄が不安」 奈良県でもう一つ、アルピニストの野口健氏がXで「本来の日本人の感性を持っていたのならばこんな事にはならないのではないか」と警鐘を鳴らし話題になった太陽光発電所がある。