毎月100万円の国会議員「第2の給与」透明化、政治への信頼回復につながるか

月額約130万円の歳費とは別に、国会議員に毎月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費、非課税)。8月から1万円超の支出を対象に使途公開を義務付ける運用が始まった。「政治とカネ」に厳しい目が向けられる中、透明性の向上で、政治の信頼回復につながるか。
在職1日で満額支給 問題視

旧文通費は歳費法などで定められており、税金が原資だ。渡しきりで使い道の公表や残金の返還は不要だったため、国会議員の「第2の給与」と呼ばれ、不透明さが問題視されてきた。
1947年に創設された「通信費」と「滞在雑費」が起源で、通信費は「会期中公の書類を郵送し及び公の性質を有する通信をなす」と規定し、滞在雑費は会期中に限って支給された。名称変更や整理統合を経る間に増額されていき、93年に旧文通費となった。
改革のきっかけは、2021年10月31日投開票の衆院選で当選した新人や元議員計約120人に在職1日で10月分が満額支給されたことだ。日本維新の会の新人が「世間の常識では考えられない」と問題視し、各党が制度の見直しに乗り出した。
22年4月、月割りから日割り支給に改め、名称を「調査研究広報滞在費」と変更し、使途を「調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動」に事実上広げた。
一方、透明化の議論は停滞が続き、24年5月、岸田首相(自民党総裁)が維新の馬場代表との党首会談で立法措置を講じることで合意したものの、その時期は明言しなかった。
1万円超支出 使途公開義務付け

昨年10月の衆院選で与党が過半数割れしたことで、事態が再び動き始めた。
同12月に使途公開と残金の国庫返還を義務付ける改正歳費法が成立。衆参両院は今年4月、支出について報告書の提出や領収書公開に関する新たな規定を決めた。
具体的には、支出総額のほか、1万円超の支出は、支出先、目的、金額、年月日を報告書に記載し、領収書の写しも添付する。項目は、「経常経費」と「議員活動費」を設け、選挙運動に使うことは禁止した。
毎年5月末までに前年の報告書を所属する院の議長に提出する。報告書は毎年11月末までにインターネット上で公開され、3年間閲覧できる。1万円以下の支出を含め、請求に応じて領収書の写しを開示し、国民のチェックを受ける体制を整えた。
罰則規定なし

旧文通費を巡っては、過去に海外投資、家族と住むマンションの家賃の支払い、家電購入といった有権者から理解を得られないような支出もあった。
規定では、調査研究広報滞在費から支出できる項目は、秘書に支払う給料や書籍購入費などと具体的に記した。ただ、議員活動と主張すれば何にでも使えるほか、規定に反した使途に対する罰則も設けていない。
議員の資金管理団体への寄付も認めた。同費を充てて支出した際、議員には報告書への記載を求めているが、選挙活動と議員活動の線引きは明確にできないことも多く、完全な実態把握は難しいとの指摘もある。
これに対し、税金が原資で、公的な活動以外に使うことが出来ない地方議員の政務活動費は「1円以上」から領収書を公開する自治体も多い。不適切な支出が判明すれば、市民らが返還請求することも可能だ。
近年の物価高も重なり、政治家の政治資金の集め方や使い道には有権者からより厳しい目が注がれている。公開基準を「1万円超」としたことの妥当性や、使途の更なる明確化が必要になっている。