日本と欧州連合(EU)は、蓄電池のサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化を目指し、包括的な協力を始める。EUの執行機関・欧州委員会のセジュルネ上級副委員長の来日に合わせ、日欧の業界団体間が15日にリサイクル促進などの協力を盛り込んだ覚書に署名し、経済安全保障上の観点から、蓄電池の「脱中国依存」を進める構えだ。
政府関係者が明らかにした。覚書には、原材料の再利用に向け、蓄電池のリサイクルに関する協力策を盛り込む。蓄電池の供給網に関するデータ共有を進め、蓄電池産業の人材育成を図るための情報交換や展示会などを通じた日欧間の企業間交流も促進する方針だ。
日EU首脳間で7月に合意した日欧「競争力アライアンス(連合)」に基づく協力策の第1弾で、16日には石破首相がセジュルネ氏と会談し、蓄電池を含む日欧の供給網強化に向けた協力も確認する見通し。
日本は、リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池分野で高い技術を誇る。2015年には電気自動車(EV)などに使う車載用で世界シェア(占有率)の半分を占めたが、近年は低価格を売りにする中国勢が市場を席巻しており、23年は中国の約6割に対し、日本勢は約8%にとどまる。
中国はリチウムイオン電池生産に不可欠な黒鉛(グラファイト)の輸出規制を23年に始めている。EVの普及が急速に進む欧州側は、中国メーカーの蓄電池への依存が続けば、経済安保上のリスクが高まると危機感を強めている。
このため、欧州側は、日欧メーカーによる生産力を向上させたい考えだ。価格競争が過度にならないよう、補助金や公共調達のあり方を見直すことで、高性能で安全な蓄電池が市場から高評価を受ける環境を整備しつつ、産業界同士の協力も後押ししていく。