強い日差しから目を守るために作られた電車の運転士用サングラスらしき製品が、近畿日本鉄道の備品として、ネットで転売に出されていたとして、波紋が広がっている。
近鉄では、このサングラスを社内で貸与しているが、それが流出したかどうかは確認できていないという。しかし、オークションサイトでは近鉄の備品だとして出品されていることから、出品者に販売停止を申し入れたことを取材に明らかにした。
「入手困難な品」「レアな逸品」と出品者PR
サングラスは、偏光レンズを使った「保護メガネ」として、近鉄が2024年8月に社内で試験着用した。同社のニュースリリースでは、「一定の効果が確認できた」として、25年7月から、目の疲れ軽減や視認性の向上などに役立てようと、約1300人の全運転士を対象に順次導入している。
「SWANS」ブランドのアイウェアで知られるメーカー「山本光学」(本社・大阪府東大阪市)の製品だ。レンズを跳ね上げるタイプとメガネの上に着用するタイプを用意した。電車の乗客に応対するときや、運転士がホームを歩くとき、電車を待避させるときなどには、レンズを跳ね上げて使用するか、保護メガネを外すかするとしている。
夏の厳しい暑さを受けて、鉄道各社も、運転士用サングラスを順次導入しており、メディアでも注目が集まっている。
そんな中で、9月10日ごろ、今回のサングラスがヤフーオークションで「近鉄 運転士用サングラス」として転売されている、とX上で指摘され、社内流出に当たるのではないかと波紋が広がった。
出品のサングラスは、跳ね上げ式タイプの方で、オークションは8日に始まり、税込み3万円の開始時価格がつけられた。即決価格は、3万4000円だった。出品者は、未使用であり、「入手困難な品」「レアな逸品」とPRしていた。送料無料で、和歌山県内からの「匿名配送」とされていた。
投稿されたいくつかの写真は、別の商品で撮影したとしている。メーカーの説明書とみられる書類も写っており、近鉄や列車区の名前があった。
サングラスは、注目を集めて、いくつか質問が寄せられた。出品者は、「市販されていますが、一般では入手できません」「かなり貴重です」などと説明していた。
「現状、紛失したなどの申告はありません」
質問の中には、近鉄のコンプライアンス担当者だとする質問もあった。「当社が社員に配布した運転士用サングラスの出品は、社員就業規程違反に当たります」などとして、「出品の取り消しをお願いいたします」と求めた。
これに対し、サングラスの出品者は、「気持ち悪く不快です」「盗品等では全くございません」などと反発していた。
オークションは、落札者がゼロのまま、9月11日に終了している。その後、15日になって、再び出品され、16日夜まで入札できる状態だ。同じアカウントで、「鉄道運転士 運転用保護メガネ」として、同じサングラスとみられる出品も行われている。
運転士用サングラスを手がける山本光学の担当者は16日、J-CASTニュースの取材に対し、ヤフオクの出品は、同社製品の運行業務者用防護メガネかどうかは写真だけでは分からないと説明した。このメガネは、一般販売はしていないが、近鉄以外の鉄道会社のほか、バス会社、運送会社などにも販売しているという。
近鉄広報部は12日、取材に対し、運転士用サングラスは社内で貸与しているとしたうえで、「当社として、出品は把握しております」と答えた。
出品写真の説明書にあった列車区には納品されていないという。また、社内ではゴム印は押さないなどいくつか違う点があるとして、備品かの真偽は分からないとした。
とはいえ、近鉄の備品として出品されていることから、「担当者が出品停止の申し入れをしています」と明らかにした。コンプライアンス担当者としているヤフオク上の質問がそれに当たるという。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)