奈良市で2022年、安倍晋三元首相を手製銃で殺害したとして、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)の裁判員裁判の第9回公判前整理手続きが21日、奈良地裁で開かれ、弁護側が請求していた宗教学者や母親ら5人の証人尋問が行われることが決まった。検察側が請求していた国会議員ら7人の採用も決定。手続きはこの日で終了し、初公判は28日に開かれる。
関係者によると、弁護側は事件の背景に「宗教被害」があるとして、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による多額の献金被害や霊感商法に詳しい宗教学者と弁護士の証人尋問を申請。約1億円を献金し自己破産した山上被告の母親や妹を含め、計5人の証人尋問を請求していた。
検察側は「宗教を理由に犯行を正当化するのは誤り」などとし、学者の尋問は不必要と主張していたが、地裁は5人全員から証言を求めることにした。
地裁は検察側が請求した証人も全員採用。検察側は犯行そのものの悪質性を立証するため、銃撃時に現場にいた参院議員や、山上被告が自作した銃を鑑定した警察官らの尋問を請求していた。
公判で弁護側は、殺人罪の成立について争わない方針で、量刑が主な争点となる。判決は来年1月21日に言い渡される。
山上被告は22年7月、参院選の応援演説中だった安倍氏に向け、手製銃を2回発射し殺害したなどとして、殺人などの罪で起訴された。23年10月に始まった公判前整理手続きは、旧統一教会が事件に与えた影響の審理をめぐる対立で長期化していた。 [時事通信社]