クマ被害、秋の観光地に打撃 「露天風呂=危険」の風評も 宿泊キャンセル、イベント中止

深刻化するクマ被害、出没が秋の行楽シーズンを迎えた観光地に打撃を与えている。宿泊キャンセルなどで人出が減り、イベント中止も相次ぐ。
客足「例年の2~3割程度」
露天風呂の清掃中にクマに襲われ、男性従業員が死亡した岩手県北上市では、宿泊キャンセルや日帰り入浴客減少が目立つ。現場から数キロ離れた夏油(げとう)温泉は観光客に人気の温泉地だが、温泉旅館「元湯夏油」を営む高橋宏典社長によれば、紅葉シーズンの客足は例年の2~3割程度まで落ち込んだという。高橋社長は「付近でクマの目撃情報はほとんどなかったが、『露天風呂=危険』のイメージが定着し、客が離れた。もはや風評被害」と困惑する。
観光名所の宮城県大崎市の鳴子峡では11月上旬に紅葉の見頃がピークを迎え、市は4カ国語でクマ出没注意を呼びかける看板を設置した。旅館、土産店などでクマ除けの鈴も販売されているが、観光事業者から「客足が悪い」と危惧する声が上がっているという。
警察のライフル駆除「歓迎」
秋田県仙北市の観光地、角館ではクマ出没が相次ぎ、親子2頭が駆除された。田沢湖・角館観光協会の細川秀清事務局次長によると、観光客からの問い合わせが急増。「街なかは観光客も多く影響を感じないが、抱返り渓谷など山間部の観光地は人出が少なくなっている」と説明する。
秋田市中心部で紅葉の名所として知られる千秋公園はクマ目撃で10月下旬から立ち入り規制し、2頭の捕獲を経て今月4日午前に規制を解除した。しかし再度の目撃情報で同日午後から規制に入った。公園近くの通町商店街振興組合の小笠原光敏事務局長は「買い物をする人が減った」と打ち明け、警察官のライフル銃による駆除に「日常生活圏でクマとは共存できず、駆除の手段が増えるのは歓迎」と話す。
「冬眠まで耐えるしか…」
イベントへの影響も出ている。北海道では浦河町のマラソン大会、古平町のロードレース大会が付近の目撃情報などを踏まえ中止された。
北斗市では八郎沼公園をライトアップする「北斗紅葉回廊」が見送られた。昨年、約2万3千人が訪れた人気イベントだが、ライトアップ時間帯がヒグマの活動時間と重なることなどが考慮された。市観光協会担当者は「冬眠まで耐えるしかない」と話す。(白岩賢太、八並朋昌、坂本隆浩)