埼玉道路陥没事故 下水の悪臭、金属のさび…健康への不安抱える住民

今年1月、埼玉県八潮市で起きた道路陥没事故から9か月以上がたちました。現場周辺では今も下水の臭いが消えず、住民は健康への不安を抱えています。
陥没現場の近くに住む、木下史江さん。「ここの部分になります」
今年7月、洗面所のタオル掛けがさび黒く変色しているのに気づきました。
こうしたさびは浴室でも。
「下水の中でお風呂入ってるような。不快なままお風呂入ってる感じです」
木下さんが、その原因ではないかと考えているのが、自宅からおよそ70mの地点で起きた…道路陥没事故。
下水道管が破損したため、周辺の住民は、下水の悪臭に悩まされていますが、金属がさびたという訴えも、相次いでいるのです。
埼玉県によりますと下水から発生した「硫化水素」がさびの原因の可能性があるといいます。
木下さんが、自宅に県が用意した測定器を置くと…
「いま0.1ppmを示しています」。硫化水素が検出されました。
この日、寝室でも検出された硫化水素。
木下史江さん
「やっぱり家の中で0.1でも出ると最初はびっくりとショック。でもやっぱり『だよね』って」
また、周辺では54台の車にもさびが確認されています。
木下史江さん
「5年前に新車で買ったので、 すごくショックでした」
県は、周辺の住宅に様々な金属を置いて「調査」を始め、補償についても検討を進めています。
さらに、住民たちが不安を感じているのが。
木下史江さん
「私たちの体も、もう限界というか、何か大きなことが起こるのではないかという不安は持っています」
硫化水素による“健康への影響”。県には不安を訴える声が40件以上届いています。
現場から130メートルほどの距離に暮らす住民は。
陥没現場から約130mに住む母親(40)
「子供が小児ぜんそくなんですけど、事故後に(ぜんそくの)発作が頻繁に出るようになってしまって」
事故以降、ぜんそくの発作が出ることが増えクスリが手放せなくなったといいます。
かかりつけ医からは下水の臭いなどストレスの多い生活が症状に影響した可能性があると指摘されたということです。
陥没現場から約130mに住む母親(40)
「子どもが苦しんでいる姿を見るのは親として本当につらい」
県は医師などによって事故との因果関係が証明されれば補償をするとしていますが、「硫化水素による健康への影響は低い」としています。
専門家は。
埼玉医科大学 上條吉人特任教授
「直接的な健康被害はないと思う、考えられないですね」
一方で下水のにおいなどストレスを感じやすい環境が「間接的に」健康に影響を及ぼす可能性があると指摘します。
埼玉医科大学 上條吉人特任教授
「不眠になるとか鬱状態になるとか、そういうことはありえるので、直接的な(健康)被害、間接的な健康被害、金属の被害、分けて考えてもらいたい。県は間接的な健康被害、金属(の被害)にきちんと対応していく必要があるのではないか」
いまも不安を抱える住民。きめ細かい対応が求められています。