神戸6歳男児死亡 分離公判の叔父「俺は神になる」と精神的に支配 3姉妹間の暴力指示も

令和5年6月、神戸市西区の草むらで、付近に住む保育園児、穂坂修(なお)ちゃん=当時(6)=の遺体が見つかった事件で、修ちゃんに激しい暴行を加えて死亡させ、遺体を遺棄したとして、傷害致死などの罪に問われた母親の沙喜被告(37)ら3姉妹の裁判員裁判初公判が19日、神戸地裁(松田道別裁判長)で開かれた。
検察、弁護側双方の冒頭陳述では、虐待の構図と穂坂家のいびつな家庭環境が明らかになった。
検察側の冒陳によると、4年12月、祖母と3姉妹の自宅を別居していた大地被告(34)が訪れ、そのまま同居を開始。同月下旬ごろ、修ちゃんから「にいに、嫌い」と言われたことで、虐待行為が始まったという。
初めは素手や空のペットボトルで殴っていたが、次第に孫の手、竹の棒、鉄パイプとエスカレートしていった。同時に、知的障害や強迫性障害があった3姉妹に対して「俺は神になる」「警察のトップだ」などと暗示をかけて精神的な支配を強め、修ちゃんに対する暴行を指示するように。指示を拒んだり虐待を止めたりすると、姉妹同士で暴力を振るうよう命令したという。
5年4月下旬には、通っていた保育園の職員が修ちゃんの尻にあざがあるのを確認。翌5月上旬には、修ちゃんが自宅2階の窓から「お腹空いた」「家に誰もいない」と泣いているのを保育士が発見し、区役所も介入を図ったが、最後まで修ちゃんが保護されることはなかったという。
そうして迎えた6月19日。検察によると、大地被告は朝美被告(32)、朝華被告(32)の2人にうつ伏せの修ちゃんの両手足を押さえつけ、沙喜被告に鉄パイプで殴るようそれぞれ指示。その後、大地被告が修ちゃんの背中の上で何度も飛び跳ねたり、踏みつけたりして死亡させたとしている。
検察側は「小さい子供を、体格差のある成人4人が暴行した」などと虐待の構図に言及し、「大地被告からの被害を最小限にとどめるために修ちゃんを犠牲にした」と指弾。また「3人は違法な行為と認識しており、外部に助けを求めることもできた」などと指摘した。
一方弁護側は「大地被告からの精神的支配を受け、暴行を止められなかった」として、3人が犯罪行為以外を選択する「期待可能性」はなかったと主張した。(宮崎秀太、浦柚月)