大分市佐賀関で起きた火災はなぜこれほど広範囲に延焼したのか。
火災が起きたのは東に延びる半島のくびれた部分にある狭い平地。東西が山で、南北に延びる谷のようになっており風の通り道となる。さらに、佐賀関は古くからの港町で、狭いエリアに古い木造住宅が軒を連ね、道路幅が狭い場所が多く消火活動も難しい。
大分地方気象台によると、火災が発生した18日は冬型の気圧配置が強まり、強い北西の風が吹きやすい状況だった。気象台は17日午前7時半過ぎに大分市を含む大分県中部などの海上に強風注意報を発表。19日未明に解除するまで強風への警戒を呼びかけていた。
大分県臼杵市消防本部の元消防長で大分大減災・復興デザイン教育研究センター客員教授の板井幸則さんは、「木造密集地に強い風が吹いたことで一気に燃え広がったのではないか。風で舞いあがった火の粉も延焼につながった可能性がある。ヘリによる消火も夜間は対応できない」と話す。
木造密集地の火災は1995年1月の阪神大震災で大きな被害を出し、2016年12月の新潟県糸魚川市の火災や24年1月の能登半島地震で起きた石川県輪島市の火災など近年も後を絶たない。板井さんは「今後も各地で起きる可能性があり、今回の火災の検証が重要だ」と訴える。
ただ、木造密集地の解消には空き家の存在が支障になる。大分市によると、佐賀関では人口減少とともに空き家が増加。20年度の実態調査では561件の空き家が確認され、大分地区に次いで多かった。相続で所有者が複数にわたっていたり、道路幅が狭い場所に密集しているため再開発が難しかったりして解消には課題が多いという。【平川昌範】