高市早苗首相にとって初めての党首討論が26日に行われ、台湾有事をめぐる発言について立憲民主党の野田佳彦代表と議論になった。高市氏は発言を撤回しなかったものの、野田氏は「事実上の撤回」と〝助け舟〟を出した。
7日の衆院予算委員会で立憲民主党の岡田克也衆院議員が、約1年前の自民党総裁選で高市氏が中国による台湾の海上封鎖が発生した場合について、存立危機事態になるかもしれないと発言していたことを質問していた。
政府見解を踏まえつつも、高市氏は「戦艦を使って武力の行使を伴うものならこれはどう考えても存立危機事態になり得るケースと考えます」と発言。これに中国が反発していた。
訪日する中国人観光客が減るなど日中関係に影を落とすことになった騒動をどのように決着させるつもりなのか。野田氏との討論のなかで高市氏は「具体的な事例を挙げて聞かれたので、その範囲で誠実に答えたつもりだ」と回答。責任について、「対話を通じて包括的な良い関係を構築し、国益を最大化するのが私の責任だ」と主張した。
討論後、野田氏は「具体例を言わなくなった。事実上の(答弁の)撤回だと受け止めた」と指摘。これが野田氏から高市氏への助け舟だとする見方もある。
これまで歴代首相が台湾有事や存立危機事態についてはっきりと明言しないでやってきたなかで、高市氏が具体的に踏み込んだことで騒動となっていた。中国は撤回を求めているが、高市氏にとって撤回は簡単ではなさそうだ。
海外メディア関係者は「高市氏の支持者が許さないでしょう。中国の要求通りに撤回する形になれば、自民党に戻りつつある保守層が離れてしまう」と指摘した。
ただでさえ日本国内は中国への反感がかなり高まっている。「先日、東京・足立区でひき逃げ事故が起きましたが、事故の第一報が流れた直後のネットはひどいものでした。犯人について『外国人だろう』『中国人じゃないか』との書き込みが多く見受けられました」(同)
野田氏と高市氏は松下政経塾で先輩後輩の仲。「事実上の撤回」には異論も多いが、この助け舟で騒動は沈静化に向かうかどうか。