「詐欺の容疑がかけられています」。25日午後3時ごろ、記者の個人携帯電話にこんな電話がかかってきた。京都府警捜査2課の警察官、宮本高志を名乗る詐欺の電話だった。
電話の内容はこうだ。マネーロンダリングの捜査中、押収品の中に記者名義の銀行カードがあったため、容疑がかけられているという。宮本は「京都府警まで出頭してほしいが、東京からでは難しいですよね」と続けたので、どうやらフルネームに加え、住所も把握されているらしい。
頃合いをみて電話を切り上げようと「京都府警に在籍確認をしたい」と申し出ると、丁寧に自身の漢字表記を教えてくれた上「不安にさせてしまい申し訳ございません」とおもんぱかるなど、巧みな電話技術を感じた。
記者の住所地を管轄する東京都内の警察署に、電話の内容や宮本の携帯電話番号を報告。応対してくれた生活安全課の警察官によると、関西地区の警察官を名乗る詐欺電話の相談が最近増えているという。記者は途中で切り上げてしまったが、話を続けるとラインのIDを聞かれることもあるそうだ。
京都府警特殊詐欺対策室にも話を聞くと「宮本高志」という警察官はやはり存在しなかった。「署員が連絡する場合、部署の固定電話を使うため、携帯電話からかかってくることはほぼない」と話す。ましてや交流サイト(SNS)でのやりとりを持ちかけることは皆無だ。
判明している詐欺電話の発信元の約7割は国際電話というが、国際電話の番号に付く「+」を表示させないなど番号を偽造することもできるという。そのため、そもそも詐欺電話を受けることがないように、国際電話の着信を拒否する設定にしたり、対策アプリを入れたりすることも有効だ。
京都府警特殊詐欺対策室の担当者は「以前はこうした詐欺で狙われるのは高齢者だったが、最近ではあらゆる世代に広がっている」と警戒を呼びかけている。【嶋田夕子】