山上被告「本来の敵は旧統一教会」 安倍元首相は「幹部に次ぐ人」

安倍晋三元首相銃撃事件で起訴された山上徹也被告(45)は4日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた裁判員裁判の被告人質問で、襲撃対象とするのはあくまでも世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の組織や最高幹部だったと明らかにした。安倍氏については「幹部に次ぐ人だった」と述べた。
被告人質問はこの日で最後となる。被告は黒い上着姿で法廷に姿を現した。被告の母親は教団にのめり込んで献金を繰り返し、被告の家庭は崩壊したとされている。
被告は「あくまでも本来の敵は旧統一教会です」と述べた。一方で、安倍氏については「旧統一教会に対する影響力がかなりあったと思います。それが標的の中に入り得た理由です」と語った。
この日は被告人質問に先立ち、被告の精神鑑定を実施した医師が証人出廷した。
医師は被告と面会を繰り返した結果、事件当時の被告に精神障害がなかったと発言。被告について「家族を混乱させ、窮地に追い込んだ旧統一教会に怒りを感じていた」と指摘した。
そのうえで、被告が事件の前月ごろに職を失って経済的に困窮する一方で、「自己破産をどうしても回避したい」と語っていたことを明らかにした。医師が「仕事が見つかったら(銃撃は)やめていたか」と聞くと、被告は「本来の目的である旧統一教会に向かっていたかもしれない」と答えたという。
医師はこれらを踏まえ、被告が人生への失望や挫折を抱える中、困窮して時間的な猶予がなくなったことで、「安倍氏と教団を関連付けていった結果、本来の目的である教団幹部ではなく、安倍氏を殺害した」と述べた。【林みづき、田辺泰裕】