「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん=当時(77)=の元妻(30)に対し、2審大阪高裁も無罪を言い渡した。55歳の年の差がありながら「契約みたいな結婚」(元妻)をした2人。殺人罪などで有罪となれば遺産相続の権利が失われるため、この日の無罪判決は約13億円といわれる遺産の行方にも影響することになる。
《私がお金を稼ぐ理由は、なんと言っても魅力的な女性とお付き合いをしたい、その一点に尽きます》
著書にこう記した野崎さんは和歌山県田辺市で生まれ、金融業や酒類販売業などを興して一代で財を成した。生前は多数の女性と交際するために「30億円を費やした」と豪語し、その言動がワイドショーや週刊誌をにぎわしていた。
元妻と結婚したのは平成30年2月。1審での元妻の被告人質問によると、元妻は紹介を受けて野崎さんと出会い、初対面で帯付きの100万円を手渡され、求婚されたという。元妻は結婚条件として毎月100万円を受け取ることを提示し、野崎さんが受け入れた。
その後、野崎さんは結婚からわずか3カ月半後の同年5月、自宅で急性覚醒剤中毒で死亡。遺産目的での元妻の犯行が疑われたが、地裁・高裁の判断は無罪だった。
無罪判決がこのまま変わらなければ、元妻には野崎さんの遺産を相続する権利が認められる。ただ、遺産問題を複雑にしているのが、野崎さんの死後に見つかった「遺言書」の存在だ。
遺言書は平成25年2月付で、紙に赤ペンで「いごん 全財産を田辺市にキフする」と手書きされていた。この遺言書を巡っては、野崎さんの兄らが「無効」を訴える民事訴訟を起こしている。
遺言がない場合の法定相続分は元妻が4分の3で、兄らが合わせて4分の1。だが遺言が有効だと判断されれば、田辺市が遺言に基づき遺産全額を取得した上で、元妻は「遺留分」として2分の1を得る権利を主張できる。兄らには遺留分はなく、この場合は遺産を受け取れない。仮に元妻が今後、逆転で有罪となり、遺言も無効と判断されれば、兄らが全額を相続する。
遺言書を巡る訴訟は1審和歌山地裁、2審大阪高裁がいずれも「有効」と判断。審理は最高裁に移っている。(西山瑞穂)