ヒグマ駆除を発端に北海道公安委員会から猟銃所持を禁じられた処分の撤回を訴え、最高裁判決で逆転勝訴した道猟友会砂川支部長の池上治男さん(77)。9日、道公安委員会の謝罪を受け、処分から7年ぶりに猟銃を手にした。【小林大輝】
長かった闘いに区切りが付いても、「(失った時間は)取り戻せない」。池上さんの表情は硬いままだった。
「不便と負担をかけたことに対しおわび申し上げる。市町村や猟友会と連携しながら、引き続きヒグマ対策に適切に対応してまいります」
9日午前、砂川市にある池上さんの自宅。道警保安課の徳田一志課長は、事前に用意された道公安委員会のコメントを読み上げた。
池上さんは複雑な思いを隠さない。
「人の7年間を……。よくも(猟銃を持てない)こんな状況にしてくれたなと思う」
誠実な対応とは言いがたかった。
謝罪の場に猟銃を所持する許可を取り消した道公安委の関係者の姿はなく、池上さんは「直接来るのが当たり前。事務方に謝罪させており、公安委員会が本当の意味で反省しているとは思えない」と不信感を募らせた。
制度確立まで「発砲しない」
一方で、池上さんは現状を冷静に見つめる。
砂川支部では池上さんが2019年4月に猟銃所持許可を取り消されて以降、原則として発砲による駆除を行っていない。今後もその方針は継続するという。
箱わなによる捕獲の成果が上がっていることも理由の一つだが、池上さんの訴訟の経過が影響している。
池上さんは1審の札幌地裁では勝訴したが、2審の札幌高裁で逆転敗訴。最高裁に上告した。最高裁は、発砲が周辺住民の生命や身体、生活環境の保護につながる重要な意義があったと認定。取り消し処分は重すぎ、著しく妥当性を欠くと結論づけた。
司法の判断が揺らいだことを踏まえ、池上さんは「ハンターの立場を守る制度が確立されない限りは砂川で発砲はしない」と語る。
支援者に感謝
訴訟に費やした時間は長かったが、全国から共感や励ましのメッセージが寄せられた。訴訟に関する費用を募るクラウドファンディング(CF)も行われ、300万円近くが集まった。「1人では戦えなかった」と支援者に謝辞を述べた。
没収された猟銃の返還は、池上さん宅で非公開で行われた。道警職員が立ち去った後、自宅から姿を見せた池上さんは、いくぶんほっとした表情を浮かべ有効期限が延長された猟銃の所持許可証を掲げた。
猟銃での駆除は技術や経験が必要とされ、危険性もあるが、出没に対する即効性は箱わなを上回るとされる。発砲再開は、砂川支部でも今後の検討課題だ。
だからこそ、この日の猟銃返還には意義があった。
「人のため真剣に活動するハンターにとって、銃は『魂』と言って過言ではない」。池上さんは、しみじみ話した。