世界が固唾をのんで見守った協議は「決裂」に終わった。米国とイランの代表団が仲介国パキスタンで行った戦闘終結に向けた協議が12日、合意に至らずに終了。11日から断続的に続いた協議は21時間にも及んだが、米イの主張は平行線のまま。停戦の糸口が見えずにドロ沼化では、日本も狂乱物価の再燃は避けがたい。
協議には、米国側からバンス副大統領とウィトコフ中東担当特使、トランプ米大統領の娘婿クシュナー氏が、イラン側からはガリバフ国会議長やアラグチ外相が参加。協議後、バンスは「悪いニュースは合意に達しなかったこと」「イランが長期にわたり核兵器を開発しないという決意を見せなかった」と不満をあらわにし、帰国の途に就いた。
一方、イラン側も「(協議は)不信と疑念に満ちた雰囲気の中で行われた」「1回の協議で合意に達すると期待すべきではない」(イラン外務省報道官)と米国を牽制。もっとも、米国との核協議のさなかに米国から国際法違反の攻撃を受けた経緯を踏まえれば、不信や疑念が渦巻いて当然である。
ただ、恒久的な停戦のメドが立たず、エネルギー輸送の要衝たるホルムズ海峡が事実上、封鎖されたままでは、さらなる物価高は待ったなし。日本政府は「年を越えて石油の供給を確保できるメドがついた」(高市首相)と繰り返すが、医療・建築資材をはじめあらゆるモノが供給不安と価格高騰に陥っている。
12日のNHK日曜討論で、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は暮らしへの影響について「停戦が即時に実現しても、後遺症として今年の夏から年末にかけては生活物価が上がると思います」と指摘。ウクライナ侵攻後に化粧品やシャンプー、家具などが半年のタイムラグを置いて10~15%値上がりした事例に触れ、「今回のイラン攻撃によって年末にかけて物価上昇率が2%台後半になるリスクもあるので、家計にとっては極めて大きなストレスがかかるだろうと警戒しています」と強調した。
■食費を削るしかない
エコノミストも今後の生活コスト増に警鐘を鳴らしているのに、政府がやっているのは「国民生活を支えるためにやれることはすべてやっていく」(赤沢経産相)とは真逆の負担増。今年8月から実施する高額療養費の負担上限額引き上げと、患者に薬剤費の4分の1の「特別料金」を課すOTC類似薬の見直しで、特に病人は二重、三重苦にあえぐことになる。足元の物価高に加え、病気の際に負担増を強いる「病人増税」が追い打ちをかけるのだ。