川崎重工業(神戸市)のエンジニアの男性が出向先の中国で自殺したのは過重労働が原因だとして、遺族が川重に約1億円の損害賠償を求めた訴訟が16日、大阪高裁(森崎英二裁判長)で和解したことが判明した。和解条項に基づき、解決金の金額をはじめとする具体的な内容は非公表とされたが、遺族側は取材に「こちらの主張を十分にくみ取った和解内容となった。事実上の勝訴と受け止めている」と説明した。
企業には、労働者が安全に働けるよう必要な配慮をする「安全配慮義務」が課されている。出向の場合、基本的に出向先企業が一次的な安全配慮義務を負うとされるが、海外出向先には日本の労働法制が原則適用されず、責任の所在が曖昧になりがちだった。
遺族側の代理人弁護士によると、海外出向中の労働災害で、出向元企業が解決金を払って和解に応じた初のケースといい、「海外出向を巡る国内企業の対応に警鐘を鳴らす和解で、画期的だ」としている。
亡くなったのは清島浩司さん(当時35歳)。訴状によると、川重に勤務していた清島さんは2013年4月から、川重と中国の現地企業の合弁会社に出向した。主にセメント製造装置の外販や技術指導を担当し、うつ病を発症して13年7月に自殺した。
神戸東労働基準監督署は16年3月、清島さんが出向先の職場で意思疎通が不十分な状態で働き、業務過多に対応できず、強い心理的負担がかかっていたと判断。自殺は仕事に起因する労災だったと認定した。
遺族は、出向元の川重の責任を問う訴訟を神戸地裁に提訴。25年1月の1審判決は請求を棄却したが、2審・大阪高裁の審理で遺族側は、清島さんが出向先企業と川重のいずれの業務も担う「二重雇用」の状態にあったと主張。26年3月に大阪高裁が和解案を提示していた。
川重は「裁判所の指揮の下、双方の主張を踏まえた協議の結果、和解した。内容については差し控える」とコメントした。【岩崎歩】