障害者雇用ビジネスを展開する業者の仲介で企業に直接雇用された在宅勤務の障害者が、実質的な仕事を与えられず、業者とチャットなどで簡単なやりとりをするだけで事実上放置されるケースが相次いでいたことがわかった。障害者の法定雇用率(現在は従業員数の2・5%)を満たしたい企業が、給与を支払って障害者を形だけ雇い、就労管理を業者に丸投げしていた構図が浮かぶ。
通報受け労働局が調査
障害者が能力を発揮できる環境整備を求めた障害者雇用促進法の理念を逸脱している疑いがある。国は障害者虐待の一つに「放置」を挙げており、障害者側から通報を受けた労働局は、業者と契約する一部の雇用企業を調査している。
この業者は九州や沖縄、広島、東京などに約50拠点を持つ「サンクスラボ」(那覇市)で、運営する福祉事業所に在籍する障害者を企業に仲介する事業を2019年から展開。障害者は同社の拠点や在宅で勤務し、同社は企業から1人あたり月20万円程度の「サポート費用」を受け取る。
同社の顧客には大手企業も含まれる。このうち大手旅行会社「日本旅行」(東京)は24年10月以降にサンクスラボを介して障害者18人を雇用したが、就労管理は同社に任せており、在宅勤務の14人については連絡も取っていなかった。
14人のうち、身体障害のある西日本の30歳代女性は「研修」名目で表計算ソフトの使い方などの自己学習を繰り返した。サンクスラボとの短時間のオンライン面談が定期的にあったが、あとはチャットで同社に勤務開始や終了の連絡をする程度。疑問を感じて退職し、取材に「仕事を与えられず、働きたい気持ちを踏みにじられた」と話した。
仏高級ブランドの日本法人「ルイ・ヴィトンジャパン」(東京)に就職した九州在住の50歳代男性も、同様に自宅で自己学習を繰り返した。孤独感で精神障害の症状を悪化させたといい、契約途中で退職した。
労働局は、就労管理を適切に行うよう日本旅行やヴィトン社などを指導するとみられる。日本旅行は取材に「コンプライアンス上、問題があった」とし、サンクスラボとの契約を打ち切る方針だ。ヴィトン社は「労働局から助言を受け、対応している」とした。
サンクスラボは取材に「一部で雇用企業と当社の関わり方や役割分担が明確でなく、連携も不十分な場面があった。改善を進めている」と回答した。
厚生労働省は「障害者雇用ビジネスの広がりについては多数の問題提起を受けており、課題解決に向けた検討を深めたい」とした。
◆障害者雇用ビジネス=企業が雇う障害者に対し、農園やサテライトオフィスなどの働く場所を提供する事業。企業から施設利用料などを受け取る。厚生労働省によると、昨年11月末時点で46業者が手掛け、少なくとも約1800社が利用、障害者約1万1200人が就労している。