【相次ぐ“春グマ”の出没】「人間の近くに食べ物がある」と学習、川沿いの木立や緑地を利用して移動 初夏に迎える“繁殖期”が市街地出没を加速

冬眠から目覚めたクマが市街地に現れ、人身被害も出始めている。人里暮らしに順応するアーバンベアが、進化を続けているという──。【前後編の前編】
川の両側に茂る木立や緑地などを利用して移動
「山の中に餌となる山菜や木の新芽などが豊富にある春は、本来、クマが市街地に出没する季節ではないんです。しかし、現在街中で目撃されているクマは、昨年の秋に街でおいしい餌にありつき、”人間の近くには食べ物がある”と学習した個体の可能性があります。過去最多のクマ被害を記録した昨年の余波が、現在も続いていると考えられます」
東京農工大学大学院教授の小池伸介さんは、全国で相次ぐ”春グマ”出没の背景をそう分析する。
すでに人身被害も発生しており、4月21日には岩手県紫波町で男性警察官がクマに襲われ、近くではクマに襲われたとみられる女性の遺体が見つかっている。5月7日にも、同県八幡平市の山林でクマ被害にあった女性の遺体が発見された。
そしてその脅威は、徐々に都市部に迫っている。4月29日に東京都八王子市の住宅街にクマが出没した。多くの買い物客や住民が行き交う八王子駅からわずか5kmほどの場所だった。
茨城県自然博物館館長でクマの生態に詳しい山崎晃司さんはこうみる。
「昨秋は餌となる木の実が凶作だったため、充分な”蓄え”ができずに冬眠したクマもいます。そういった個体は、冬眠明けのいま、体脂肪がかなり少ない状態です。”空腹”の個体が食べ物を求めて広範囲に行動していることも、市街地への出没が増えている要因のひとつと考えられます。クマは身を隠せる場所を好む習性があり、川の両側に茂る木立や緑地などを利用して移動します。餌を探して多摩川を伝い、例えば東京・世田谷区の二子玉川の近辺に出没する可能性もゼロではないでしょう。
これまで恒常的にはクマがいないとされてきた大阪府でも、他県と接する山沿いでクマが出没するようになりました。彼らの生活圏が変化しつつあるのです」
防衛本能が高まっている母グマ
さらに初夏に迎える「繁殖期」が、クマの市街地出没を加速させる恐れもある。
「5月から7月が繁殖期とされるので、まさにいま。オスは毎年発情しますが、メスは違います。メスは一度出産すると子育てに2年から3年をかけ、その期間はむしろオスを避ける。この時期はオスから逃れる母子グマが山を下り、市街地に隣接する森で子育てをしているケースも少なくないのです」(小池さん)
子グマを連れた母グマは防衛本能が高まっており、もし人間が近づけば、わが子を守ろうとパニックになって襲ってくる可能性が高いという。
当然だが、オスの動きにも注意が必要だ。
「繁殖期のオスがメスを探して、行動圏を大きく広げます。そのため、”こんなところにまで”と思うような人間の生活圏にまで出てきてしまうことも。人間と遭遇する機会が必然的に増えてしまうことも考えられます」(山崎さん)
(後編につづく)
※女性セブン2026年6月4日号