【右の耳から左の耳】#5
日韓首脳会談時の高市総理の振る舞いに対する批判の声が高まっている。特に李在明大統領のメガネを装着したことに対して、「媚びた態度」などと、かつての嫌韓派かと見まがうほどの怒りのコメントがリベラル派から噴出している。
李大統領がどう感じたかは知る由もないが、就任以来、日本批判を控えていることは確かだ。
アメリカが中国と取引し、徐々にアジアから退いていく可能性さえある中で、日韓に加え台湾は自らの生存戦略を真剣に再考せざるを得ない局面を迎えている。厳しい対日姿勢で知られた李大統領の変化もそうした背景によるものだろう。
日本でも韓国に学ぶ姿勢は強まっている。日本各地の「反戦デモ」では韓国のデモの手法が取り入れられ、色とりどりのペンライトや「非実在団体ののぼり」が数多く振られている。韓国フェミニズムに関する著作もかなり前から翻訳されている。
さらに韓国に学ぶべきなのは、防衛装備品の輸出である。韓国は1970年代から防衛装備品の自国開発と輸出に力を入れ、輸出後のアフターケアも万全。韓国の装備品は「K兵器」として世界で知られ、輸出の世界シェアは第4位となるまでに成長した。
「韓国の国防政策」(勁草書房)の著書もあり韓国の装備品輸出に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の伊藤弘太郎さんに話を聞いた(月刊「Hanada」2026年6月号掲載)が、韓国国内では装備品の輸出に関して「死の商人になるつもりか」といった類いの批判はほとんどないそうだ。その理由の一つに、徴兵制があげられるという。
男性の場合は自身が、女性であっても自分の父や兄弟、夫や息子が軍人経験を持つとなれば、少しでも性能のいい装備品を開発してもらいたい。性能が国際的に評価されることも、左右の別なく受け入れられているという。
我々は軍事研究や装備品開発に対して「それが国民、自衛官を守ることにつながる」との視点を持っているだろうか。
日本ではデモでペンライトを振る人は主に装備品の輸出に反対していると思われるが、韓国のデモはこうした国民意識に支えられたものでもあることは知っておく必要があろう。
また、韓国の一部には「自分たちが対北朝鮮の最前線に立って地域の安定を守っているのだから、日本にもその点を理解してほしい」との思いもあると聞く。日本の保守派と嫌韓派は重なるが、仮にどんなに韓国嫌いでも安全保障の枠組みでは同じ側に属するのが日韓なのだ。
「高市メガネ批判」にとどまらない日韓関係を眺める眼鏡を身につけたい。
▽梶原麻衣子(かじわら・まいこ) 1980年、埼玉県生まれ。中大文学部史学科卒。IT企業勤務後、2005年から花田紀凱編集長の「月刊WiLL」「月刊Hanada」編集部に所属。19年に退職し、現在はフリーの編集者・ライターとして活動。著書に「『“右翼”雑誌』の舞台裏」「安倍晋三 ドナルド・トランプ交友録」。