強盗事件を自作自演したとして、偽計業務妨害罪に問われた山形県寒河江市の消防職員の男(54)の判決が3日、山形地裁であり、田中昭行裁判長は拘禁刑1年、執行猶予3年(求刑・拘禁刑1年)を言い渡した。35年間勤めた消防士がなぜ稚拙な犯罪に走ったのか――。裁判からは、ギャンブル依存症を抱え、自らを追い詰めていった実態が浮かび上がった。(岩峪諒)
上下黒色のスーツ姿で、証言台に直立不動で立った男。判決の主文が読み上げられると、「はい」と短く返事をした。
判決によると、男は今年2月18日、大江町左沢の県朝日少年自然の家の敷地内で、居合わせた作業員や駆けつけた警察官に「刃物を持った2人組に襲われ、80万円を奪われた」などと虚偽の強盗被害を告げ、警察官約170人に現場臨場や交通検問などを行わせ、業務を妨害した。
男は過去にもパチンコを繰り返し、300万円の借金を父親に肩代わりさせていた。その際、妻から「次に借金したら離婚する」と言われていたという。だが、再びパチンコにのめり込み、500万円の借金を抱えてしまった。
今年1月29日、クレジットカード会社から「83万円を支払わなければ、給与を差し押さえる」と通知が来る。「離婚される」。頭をかすめたのは妻の顔だった。
期限の2月18日になっても金を用意できない。「他殺と見せかけて、自殺をして保険金で返すしかない」。職場を早退すると自宅に戻り、包丁で腹を切ろうとしたができず。大江町の公園で首をつろうとしたが失敗した。
考え抜いた末に、思いついたのが強盗被害の自作自演だった。「妻に借金を返してもらうにはこれしかないと思った」。靴ひもで手足を縛り、ほふく前進で近くにいた作業員の所まで行くと、助けを求めた。
警察から取り調べを受けた翌朝、自宅に戻り妻から「うそだっけ」と言われ、「んだ」と認めた。警察に連絡をしたのは妻だった。
男は保釈後、山形市内の病院でギャンブル依存症と診断された。それでも証人として立った妻は「夫を支えたい」という。男は懲戒免職される可能性が高く、病気の妻と高校生の子どもを養うために職を探すつもりだ。「働いて家族のためにお金を使いたい」。法廷でこう誓った。
判決で、田中裁判長が「家族はあなたを支えてくれる存在であり、あなたが守っていくべき存在。家族にうそをつかず、悩みや困りごとを正直に話すことを絶対に守ってほしい」と諭すと、男は「はい」と返事をし、最後まで深々と頭を下げていた。