「議員会館内で不適切な関係」「公費のホテルに女性を…」単なる不倫スキャンダルではない、高市首相の周辺で相次ぐ「公私混同」と「危機管理の杜撰さ」

高市首相陣営が他の候補を誹謗中傷する動画作成を依頼していたという件。国会でも追及されているが、興味深いのは「週刊誌の話題なんて」とか「もっと大事なことをやれ」という反応が見られることだ。タレントコメンテーターにも「ゴシップ誌にこんだけかきまわされたらたまったもんじゃないですよね」と述べた人もいる。
これはゴシップなのだろうか?
不思議だ。どうして「週刊誌を信じるか、高市さんを信じるか」みたいな話になるのだろう(そういえば高市首相は当初「秘書を信じる」と言っていた。似ている)。
問われているのは、報じられた内容について、どこまで確認し、何が確認できていないのかという説明責任だ。報じられているのは、民主主義の根幹である選挙を歪めたのではないかという疑惑である。これはゴシップなのだろうか?
さらに言えば、サナエトークン設計者である松井健氏のような、問題視されている人物がなぜ首相の周辺に入り込めたのか。高市首相は「国家情報局」の設置やスパイ防止法を強く訴えている。だが、その足元では近づいてくる人物を見極めることすらできていなかった。説明もちぐはぐで、国を背負うリーダーとしての資質が問われている。これこそ「もっと大事なこと」ではないか。
ゴシップというなら、不倫などのスキャンダル報道だろう。しかしこれですら「もっと大事なこと」が見えてしまうことがある。
たとえば3月11日、「週刊文春」は松本洋平文科相が既婚女性と長年にわたり不倫関係にあったと報じた。松本氏は女性を衆院議員会館の自室に招いていたとされる。
これに対し松本氏は国会で謝罪しつつ、「過去の話」「議員会館では意見交換をしただけ」と説明した。高市首相も「仕事で返してほしい」として続投を容認した。
ところが、その7日後に文春は続報を出す。
高市首相は「読んでいない」と答え…
松本氏は不倫を「過去の話」と説明していたが、相手の女性は関係が昨年(初入閣直前)まで続いていたと証言。また、松本氏が「議員会館では意見交換をしただけ」と答弁したことについても、議員会館内で不適切な関係があったと述べた。
これはただのゴシップ記事だろうか。私にはむしろ、高市政権の「危機管理」が表れた事例に見える。過去の報道を見ても文春が第一報だけで終わるとは考えにくい。それにもかかわらず政権側は第一報だけを前提に判断し、その後の展開を十分想定していなかった。結果として問題は不倫から説明責任へ、そして答弁の信頼性へと広がっていった。実はこの構図は、中傷動画問題やサナエトークン問題とも重なって見える。
さらに松本大臣不倫報道への対応も思い出したい。文春の続報について問われた際、高市首相は「読んでいない」と答えた。これは先日の国会での「(文春の)有料会員になりたくないので読んでいない」という対応を思い出す。
次の指摘が興味深い。首相は追及されると、
「感情に任せて答えてしまう。その結果、『有料会員にならない』『音声に違和感』など“トンデモ答弁”が相次いでしまった。尾﨑正直官房副長官も『手元の資料とは異なる。予定にない答弁だった』と漏らしていました」(政治部デスク)
とされる(週刊文春 電子版6月10日)。
こうしたやり取りを見ていると、ふと考えてしまう。海外の首脳との交渉ではどうなのだろうか。「文春への対応だけ雑だけど、外交では別人のように冷静で慎重になる」とは思えないからだ。だとすれば、これも「もっと大事なこと」につながっている。
実は、直近ではもうひとつある。一見するとゴシップにしか見えない案件だ。
月刊「文藝春秋」は、高市首相の最側近官僚の一人である茂木正・官房長官秘書官について、公費出張中に不倫相手の女性をホテルに呼び寄せていた疑いを報じた。記事によれば、当時の茂木氏は大阪・関西万博の首席国際博覧会統括調整官。公費で宿泊していたホテルの部屋に女性を招き入れ、複数回にわたって関係を持っていたという。
「筆者は文春は猟犬だと思っている」
これも一見すると不倫スキャンダルに見える。しかし気になったのは不倫そのものより、公費で出張し、公費で確保された部屋を私的な目的に使ったとされる点だ。
そこで、ここまで見てきた話を並べてみたい。
サナエトークン問題は、首相の名前や政治的影響力がどこまで私的なビジネスに利用されたのかという話だった。
松本文科相の問題も、議員会館という公的な空間が私的な関係の場として使われていたのではないかという疑惑だった。
そして今回は、公費出張という公的な制度の利用が問われている。
どこか共通した匂いがある。公私混同であり、権力への無自覚さであり、危機管理の杜撰さである。
さて、筆者は文春は猟犬だと思っている。獲物をとってくるけれど、猟犬自身には「良い獲物」も「悪い獲物」もない。政治ネタだろうが芸能人の不倫ネタだろうが、目の前に獲物(スクープ)があれば獲るだけだ。別に正義の味方ではない。どの記事を重要視するかは読者が判断するしかない。
「国会でゴシップばかりやるな」という人がいる。だが困ったことに、ゴシップの方から本質を連れてきてしまうことがある。結局、「もっと大事なことをやれ」と言われた記事ほど、「もっと大事なこと」を語っていたのである。
(プチ鹿島)