「議員を選べない」地方議会、町村議選の27%無投票に…議員定数削減の動き広がる

来年春の統一地方選を前に、議員定数を削減する動きが広がっている。人口減少が進む町村部を中心に「なり手不足」による無投票を回避したい考えからだ。都市部では2025年国勢調査(速報値)などに基づく見直し議論が進む中、「有権者の声が遠くなる」との懸念もあり、削減に慎重な自治体も少なくない。(浦野親典、藤岡一樹)
地方議会の定数は地方自治法に基づき、自治体が独自に条例で定める。統一選に向け、対応が続々決まっている。
高知県安田町(人口約2200人)は12日の町議会で、来春の町議選から定数を2減らし、8とする条例改正案を全会一致で可決した。町議選が23年まで3回続けて無投票となっているからだ。
町議会はなり手不足が課題で、昨年6月に特別委員会を設置し、対応を協議してきた。佐竹正利議長は取材に「民主主義の原点である選挙で議員を選べない状況は住民にとって望ましくない」と強調している。
2回連続で無投票だった北海道沼田町(同約2700人)も来春の町議選から定数を1減の9とする方向となった。議会内には「有権者の信任を得るには選挙戦を経ることが重要」との意見が多く、無投票を避ける狙いがある。9月議会で決定する見込み。
町村議選は近年、無投票が増えている。全国町村議会議長会によると、19年5月~23年4月にあった926の町村議選のうち、254議会(27・4%)が無投票だった。15年5月~19年4月の204議会に比べ、50議会増となった。
大阪府は16日、次期府議選から定数を6削減して73とする条例改正案について、府議会最大会派・大阪維新の会の賛成多数で可決した。
条例改正案は維新が提案したもので、23年府議選で「全都道府県議会で最もスリムな議会」を公約に掲げ、過半数を獲得したことを理由に挙げた。国勢調査を踏まえ、人口が少ない区の定数が人口の多い区を上回る「逆転現象」の解消を図りつつ、定数が増える選挙区が出ないようにした結果、削減幅は6となった。維新内では一時、英・ロンドンを参考に定数を同規模の29とする案も検討された。
府議会定数は、維新の主導で11年に109から88、22年には更に79に減らした。来春からの73では、人口10万人あたりの議員数は0・83人となり、東京(0・89人)を下回り、全国最少となる見通しだ。
「1人区」は3増の39選挙区で、全体の7割超を占める。1人区は第1党が強いとされており、自民党府議は「維新に有利な制度を作っている」と反発。公明党府議は「『身を切る改革』ではなく、民意を切る暴挙だ」と批判している。
異例の定数増を決めた議会もある。
石川県は来春の県議選から定数を1増の42とする。人口減少などで定数減の対象だった奥能登の2選挙区(定数1~2)を合区した上で、計3の定数を維持した。能登半島地震の被害を考慮したためで、これに伴う「1票の格差」を解消しようと、人口の多い別の2選挙区を合区し、合計の定数を1増やすことにした。
富山(同40)、山口(同47)、愛媛(同47)各県では国勢調査などを踏まえ、削減する方針だ。一方、栃木(同50)、奈良(同43)、大分(同43)各県は今月、定数を維持する方向となった。削減案を巡り、栃木県では「有権者の声が届きにくくなる」と慎重意見があった。奈良県では「意見を一つにまとめるのは難しい」として、結論を統一選後に持ち越した。
議会定数減を住民が直接請求
住民が議員定数のあり方について議会に意見するケースもある。
岡山県笠岡市(人口約4万3000人)の住民団体は4月、市議会定数を2減の18とすることを目指し、市に直接請求した。地方自治法で定めた有権者の50分の1(744人)を超える2426人分の署名が集まった。5月の臨時議会では、議員にかかる経費を節減し、福祉予算などを確保するためとして、市長が条例改正案を提出したものの、賛成は2人にとどまり、否決された。
前回選が無投票だった山形県大蔵村(同約2700人)は3月、来春の村議選から定数を2減の8とすることを決めた。村議会が昨年2月に実施したアンケートの回答者のうち、約6割が「(定数が)多い」と指摘したことや人口減を踏まえた対応だ。ただ、ある村議は「今でも大変なのに、議員を減らして行政をチェックできるのか」と不安視する。
地方議会に詳しい大正大の江藤俊昭教授(地方自治論)の話「地方議会には行政を監視したり、政策を提言したりする重要な役割がある。そのためにどれぐらいの議員数が必要なのかを考え、望ましい定数を探るのが本来であって、なり手不足などの課題があっても短絡的に定数減を進めてしまえば、議会の能力低下を招いてしまう可能性がある」