東京都渋谷区富ケ谷のマンション建設現場で土砂崩れの可能性がある危険な盛り土が発生している問題で、警視庁は付近の住民らが提出した盛り土規制法違反容疑での告発状を受理した。告発状では建設業者が無許可で盛り土をしたとしている。捜査関係者への取材で判明した。
告発状などによると、業者はこの現場で地上3階、地下1階建てのマンション建設を計画。2025年6月、規制法で定められた許可を取らないまま、既存建物の擁壁撤去工事を開始し、高さ4メートル、幅80メートル、奥行き5メートルにわたって土砂を削り、約10メートルの高低差がある傾斜地に高さ4~5メートル、幅70メートルの盛り土をしたなどとしている。受理は4月21日付。
告発に先立ち、住民らは25年10月、工事を監督する立場にあった渋谷区に対し、工事停止を業者に命じるよう求める民事の申し立てを東京地裁にした。
渋谷区は、現場の盛り土は一時的に発生するもので、許可は不要などと主張。だが、地裁は26年3月に「工事の過程の盛り土を規制対象外とするのは、国民の生命を守ることができない」として、業者に許可を申請するよう求めなかった渋谷区の主張を退け、住民の訴えを認める決定を出していた。
渋谷区は即時抗告しており、現場は土砂崩れの恐れがある危険な盛り土が作られたまま、今も工事が中断された状態になっている。
盛り土規制法は21年7月3日午前に発生し、28人が犠牲になった静岡県熱海市の土石流災害をきっかけに成立した。違反した法人に科される罰金は最高3億円になる。
東京地裁の3月の決定は、規制法の行政運用を巡り、初の司法判断が下されたケースとして注目された。災害発生から5年が経過するなか、警視庁の捜査の行方は全国の行政関係者から関心を呼びそうだ。
告発状の受理を受け、業者側は「捜査に協力していく。現時点でお伝えできることはほかにない」と話した。住民側の代理人は「計画の見直しを求めていたにもかかわらず工事を強行しており、盛り土規制法の趣旨をないがしろにする行為は悪質」と主張している。【寺田剛】