事故絶えない「第4種踏切」全国2200か所、解消進まず…多額の改修費用ネックに

遮断機と警報機がなく、人身事故が絶えない「第4種踏切」の解消が進んでいない。全国に約2200か所あり、総務省行政評価局が廃止・改修を勧告して今年で5年になるが、読売新聞のアンケートで廃止・改修の具体的計画がないと回答した鉄道事業者は5割近くに上る。住民の合意を得る難しさや、多額の改修費用がネックとなっている。(大重真弓、古賀章太郎)
富山市などを走る富山地方鉄道。総延長108・4キロの沿線には第4種踏切が50か所ある。同鉄道の担当者は「農作業用に使われている踏切も多く、廃止したくても住民の合意が得られない」と頭を悩ませる。
遮断機、警報機がある「第1種踏切」への改修も、1か所あたり1500万~3000万円かかるとされる。「利用者の減少で赤字経営が続いており、列車の安全運行に必要な設備投資を優先せざるを得ない」という。
私鉄最多の80か所の第4種踏切を抱える埼玉県北部の秩父鉄道(総延長75・4キロ)は2024年、「廃止を原則とする」と表明した。死亡事故などの人身事故が相次いだためだ。
だが、30か所ある同県秩父市では住民との協議がまとまらず、廃止はゼロ。市の担当者は「粘り強くお願いしていくしかない」と話す。
国土交通省によると、第4種踏切は昨年3月末時点で全国に2282か所ある。鉄道営業法の省令で「踏切は警報機と遮断機が必要」とする現行の安全基準を満たしていない。24年の100か所あたりの事故件数は1・01件と、第1種(0・65件)より多い。20~24年度の事故件数は計103件に上る。
死傷事故の多発を受け、行政評価局は21年11月、第4種踏切の廃止・改修(第1種化)を進めるよう国交省に勧告した。その後、同省は鉄道事業者と関係自治体による協議会の設置や、廃止・改修費の補助を進めているが、減少ペースは年60か所前後にとどまる。
読売新聞が昨年11~12月、全国の鉄道事業者137社に行ったアンケート(126社回答)では、第4種踏切があると回答した79社のうち、廃止・改修の具体的計画が「ある」のはJR東日本、四国、貨物と私鉄15社の計18社にとどまったのに対し、「ない」は富山地方鉄道や高松琴平電気鉄道など私鉄計36社に上った。
ない理由(複数回答)は「(改修に)多額の費用がかかる」(26社)、「(廃止への)住民の合意が得られない」(24社)が多い。
国交省鉄道局の担当者は「生活道路として使われている踏切も多く、住民の合意を得るのが容易ではない。国としても引き続き協議会を通じて廃止を働きかけ、安全対策の促進を粘り強く求めていく」と話す。
子どもが犠牲となる事故が起きたのを受け、廃止・改修が進む鉄道もある。
群馬県内を走る上信電鉄(33・7キロ)の天水踏切(同県高崎市吉井町小暮)では24年4月6日、小学4年の女児(当時9歳)が電車にはねられて死亡した。愛犬を追いかけ、踏切に入ったとみられている。
この事故を受け、群馬県や高崎市は24年、県内の全ての第4種踏切を29年度末までに解消し、第1種への改修費用を負担することを決めた。事故当時74か所あった第4種踏切は、今年6月末時点で52か所に減少。天水踏切も昨年12月に第1種となった。女児の父・訓(さとし)さん(47)は「安全を第一に考え、全国で解消を進めてほしい」と訴える。
工学院大学の高木亮教授(電気鉄道工学)は「鉄道事業者や自治体の解消に向けた努力は、不十分と言わざるを得ない。鉄道事業者や自治体は解消を進めるとともに、住民らに実際の事故の事例を示すなどして危険性を周知していく必要がある」と指摘する。
◆第4種踏切=遮断機と警報機がない踏切。いずれもある「第1種」、係員が遮断機を操作する「第2種」、警報機のみの「第3種」と区別される。国土交通省によると、昨年3月末時点で第1種は2万9357か所、第3種は567か所あり、第2種はない。
手動「簡易型」設置動きも
廃止・改修が進まない中、応急策として手動の簡易遮断機を設置する動きもある。
全国最多の361か所(3月末時点)の第4種踏切を抱えるJR西日本は、2021年から手動の簡易遮断機の設置に力を入れる。設置費は1か所あたり100万~200万円台で、これまで設置した173か所では事故を未然に防げているという。
国交省は24年度から、手動の簡易遮断機の設置費を1か所あたり最大2分の1補助する支援制度を始めた。これまでにJR東日本や関東鉄道、富山地方鉄道など11社が活用している。