放送業界の人権意識の低さが、再び浮き彫りになった。誤った対応の根底に、組織としての構造的な問題があるのではないか。
NHK職員が番組出演者から性被害を受け、休職に追い込まれた上、復職時の異動希望が認められなかった問題が明らかになった。
NHKの発表によると、職員は出演者らとの懇親会の後、意に沿わない性被害に遭った。その後、体調不良となり休職。被害から1年数カ月後、職場に被害を申告するとともに、フラッシュバックへの対処として別部局での復職を求めた。
しかし人事局は現所属での復帰が原則だとし元の職場に戻した。産業医も異動を提案するも、異動が受け入れられたのは被害から3年余り後のことである。
職員は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されている。訴え出るだけでも相当の覚悟を必要としただろうに、心身の安全を守る措置が長く講じられなかったことは、人権意識に欠ける重大な問題だ。
さらに深刻なのは、NHKの上層部やリスク対策担当部局が問題を把握したのは昨年4月のこと。職員が労働組合を通じ異動が認められない理由を確認したからだという。
翌5月に弁護士らによる調査検討委員会が設置され、このほど調査結果が公表された。検討委は被害の深刻さの認識や組織的な対応が欠落していたことを厳しく批判している。
性被害対策で最も重要なのは告発した人を守ることだ。被害者救済を優先した対応が取られなかったことは、残念というほかない。
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加害者の出演者は「飲酒していたため記憶がない。もしそうした事実があったのであれば申し訳ない」と話しているという。番組は既に終了しており、NHKは現在放送中の番組ではこの出演者を起用していない。
また当時対応した人事担当者ら5人については注意したとする。だが懲戒処分には踏み込まなかった。
NHKの井上樹彦会長は、被害の発生を「痛恨」とコメントし、対応をわびた。
調査検討委は「(被害者の)心情に配慮した処遇の実現に向け汗をかく職員はいなかった」と言い切っている。
経緯の説明が不十分なこともあり、責任の所在があいまいで、担当者の処分にも釈然としないものが残る。
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被害に遭った職員が労組に相談する直前の昨年3月、フジテレビ問題で第三者委員会が、元タレントによる元アナウンサーへの性暴力を認定している。
フジテレビの報告書にある「人権問題の認識欠如」「組織の強い同質性・閉鎖性・硬直性」などは共通する問題ではないか。
公共放送の社会的責任としてNHKにはより高い人権意識が求められている。
なぜ寄り添った対応が取れなかったのか。なぜこんなに時間がかかったのか。被害者のプライバシーに配慮しつつ、視聴者へ説明を尽くすべきだ。