観光自粛は思いやりなのか 配慮が「二次被害」招く 熊本地震の被災地で感じたこと 記者ノートfrom湊町

思いやりはどうあるべきか-。酷暑の夏、10年で3度目の震度7に襲われた熊本県の被災地を訪れ、自問せずにはいられなかった。余震への不安などから観光の自粛ムードが広がっている。「こんな時に」という配慮もあるだろう。だが、それこそが〝二次被害〟となる現実があったからだ。
7月28日に発生した熊本地震。4日後、取材チームで現地へ向かい、氷川町や八代市の家屋倒壊現場、宇城市の避難所などを取材した。被害の大きさを目の当たりにし、被災者が漏らす不安に耳を傾けた。
直接的な被害は県南部が中心だが、ほかの地域にも別の形の「被害」があった。県によると、8月6日までに受け付けた宿泊施設のキャンセル額(暫定値)は、県全体で20億6300万円。熊本での観光を控える動きが進んでいた。
中でも阿蘇地方の金額は全体の3割超を占めた。避暑地としても人気があり、夏は本来、書き入れ時。阿蘇市内の観光事業者は「観光客が来ないことには生活も苦しい。大丈夫な場所には来てほしい」と話す。
ただ、市を取材すると、「被害の大きかった地域のことを考えると『阿蘇は元気です』とはなかなか言えない」と悩む声もあった。
一方で予定通りに開かれたイベントもある。歌手の長渕剛さんは18日、熊本市内のコンサートを中止せず、「明日へ向かう力を届けたい」と舞台に立った。地震後、改めて開催が発表された際、木村敬知事は自身のSNSに「ホテルも飲食も風評被害でとても苦しんでいます。そんな中での開催宣言と熊本へのエール。ありがとう長渕剛さん!」と投稿した。
被災地に心を寄せながら、できるだけ経済活動は止めない。それも「思いやり」の一つの形だと感じた。(木下倫太朗)