万博工事背任で下請け業者側「発注側の現場責任者である容疑者から指示受け、従わざるを得なかった」

大阪・関西万博の会場建設工事を巡る背任事件で、竹中工務店の現場責任者だった男(61)が、下請け業者に水増し請求させたとされる約1300万円の全額を自宅などのリフォームに充てていたことが、捜査関係者への取材でわかった。下請け業者の取り分はなかったという。大阪府警は男が立場を利用し、一方的に利益を得たとみている。
男は昨年、下請け業者に対し、万博会場内の仮設事務所の内装工事費を水増し請求させ、竹中工務店に約1300万円の損害を与えた疑いで、今月19日に逮捕された。
捜査関係者によると、水増し分は全額、男の自宅リフォームや所有するマンション、親族が経営する飲食店の改修工事費に充てられていたという。リフォームは下請け業者が別の建設業者に発注していた。
男は、この下請け業者の代表と15~20年前に知り合い、以前から仕事を発注。府警は、長年の工事発注者と下請けの関係性を利用したとみている。
下請け業者の代表の代理人弁護士が21日、報道陣の取材に応じた。
代理人弁護士によると、代表は水増し請求分をリフォームに充てたことを認め、「発注側の現場責任者である容疑者から指示を受けたので、従わざるを得なかった」と述べているという。府警にも同様の説明をしたとしている。
建設業の「リベート」、上下関係を背景に
建設業界は、ゼネコンが受注した工事を多数の中小企業に繰り返し発注するピラミッド型の「多重下請け構造」になっている。
国土交通省によると、大型建築物の建設には、鉄筋や電気、内装など多様な専門性が必要とされる。時期によって工事量に波があり、1社で対応すると人件費が高くなるなど非効率となる。そのため工事ごとに、専門業者をゼネコンが取りまとめる分業が合理的という。
ゼネコンは工程管理や品質チェックなど工事全般に責任を負う立場で、予算配分や下請け業者の選定に大きな権限を持つ。一方で、上下関係を背景とし、下請け業者が元請けに謝礼金として支払う「リベート」は、以前から問題視されていた。
建設工事の紛争に詳しい杉原悠介弁護士(東京弁護士会)は「下請け側は、仕事をもらえなくなる怖さから現場責任者の機嫌を損なうことができず、顔色をうかがわざるを得ない。現場責任者の不正は発覚しにくく、ゼネコンは、下請け業者にも法令違反の通報・相談を呼びかけるなど、対策が必要だ」と話した。