〈《特急スペーシアX・4人死亡》「なぜ…」事故直前に作業指揮者の“上役”が作業員と危険な場所に入っていた謎…現場の責任者は誰だったのか? 遺族は「取り返しがつかない」〉から続く
8月20日に栃木県鹿沼市の東武日光線・新鹿沼駅で特急「スペーシアX2号」が除草作業中の作業員4人に接触し全員が死亡した事故。栃木県警などは列車の接近を知らせる「見張り員」が機能していなかった疑いがあるとみて調べているもようだ。だが、かつて線路内で同様の作業をした経験者は集英社オンラインの取材に別の疑問を口にした。現場の作業員には原則的に事前に列車の運行時刻が周知され、列車接近を確認してから退避するのではなく、通過予定時刻が近づけば列車が見えなくとも退避しておくのが通常だというのだ。
《画像》「納得できるわけがない」と取材に語る死亡した作業員の兄、不安そうに車両を見つめる事故直後の作業員、現場に供えられた花
車で踏切へ向けて移動中だった中継見張り員
事故を巡っては、発生直後に東武鉄道が記者会見で説明した現場の状況が、実際のものとは違っていた疑いが出ている。
事故当日、新鹿沼駅周辺では除草作業のため東武鉄道から仕事を受けた元請けの東武建設(栃木県日光市)の社員2人が、同社から発注された孫請けのX建設が手配した5人に作業を指示し、それを確認していた。この計7人が除草作業にあたっていた。
さらに、列車接近を知らせる担当として、いずれも宇都宮市内にある警備会社Y社とZ社から派遣された計3人の見張り員が事故現場周辺に上下線に分かれて配置されていた。この3人の見張り員のうち2人の位置や行動が焦点になっている。
事故は現在使われていない上り線旧ホームの脇の線路上で、ホームに上がるのが遅れた4人が列車に接触したとみられている。この上り線では事故現場から約315メートル手前の踏切に『中継見張り員』が、同約80メートル手前に『列車見張り員』が、それぞれいたと東武鉄道は会見で説明した。
「いずれも列車が近づけば黄色い手旗で知らせ、作業員の退避を確認したら列車に向け同じ黄旗を示して進入可能を意味する“列車接近了解合図”を示すのが役割でした。
ただ、会見で東武鉄道は、中継見張り員は所定の配置場所にいたが『(事故の前に列車見張り員と)意思疎通が取れない状態にあった』と話していると説明しました。
さらに列車運転士の話として、現場の約215メートル手前に差し掛かった時に、列車見張り員から、列車接近了解合図が手旗で送られてきたと話していることも紹介しました。しかし実際には作業員は退避しておらず、この合図がなぜ出されたのかが謎となってきました。
ところが今週になって、事故車両のドライブレコーダーの分析によって、踏切付近にいたとされていた中継見張り員が映っていなかったことが分かりました。
実は中継見張り員については東武鉄道は最初、事故時に『車で踏切へ向けて移動中だった』と説明しましたが、会見中に『踏切に到着していたが意思疎通が取れない状態だったと本人が話している』と説明を変えています。実際には最初の説明の方が実態に近かった可能性があります」(社会部記者)
どちらにせよ、もう一人の列車見張り員も列車に誤ったサインを出した疑いがあり、上り線の見張り員2人の行動の解明が事故原因究明の鍵になるとみられている。
「必ず時刻表が渡され、いつ列車が来るかを頭に入れた上で作業に入る」
しかし、この事故前の作業員らの動きには疑問を感じるという証言者が現れた。十年以上前に今回孫請けのX社の作業員として同じように東武鉄道の線路内で草刈りなどの作業をしたことがあるという男性が、匿名を条件に過去の経験を話した。
「私がX社の一員として草刈りをやった当時は、今回言われているような除草剤を噴霧する方法ではなく、回転式のカッターの草刈り機を使っていました。だいたい数人で作業をしていました。
今回不思議に思うのは、列車が近づいてきたらまず中継見張り員が、次に列車見張り員が作業員らに知らせるシステムになっていることです。私たちの時も当然、見張り員が旗や笛などで列車接近を作業員に知らせていましたが、その前になぜ退避していなかったのかと。
というのは、作業開始前にはミーティングがあり、必ず時刻表が渡され、いつ列車が来るかを頭に入れた上で作業に入るのです。そして、予定時刻の前になれば(列車が見えなくても)退避していました」(男性)
これは原則で、男性が作業をしていた時も完全にそうしたやり方が行なわれていたわけでもなく、列車接近まで作業員が気づかなかったこともあったという。
「一度、列車が遠くから一度警笛を鳴らしたのに作業員が気づかず、接近してからの2回目の警笛でようやく気付いて逃げた、危ない時もありました。
作業中は両手で草刈り機を持つのですが、機械はすごい音がするので呼びかけが聞こえにくい時もありました。足元の刃先と草と線路を集中して見ていて、チラチラと見張り員の方を見て旗が上がっていないか確認しながら作業をしていた感じです。
もし接近に気づくのが遅れると、すぐには逃げられないと思います。機械を両手で持っているので身動きがとりづらいんです」(男性)
それでも自分の命に直結するため、時刻表をきちんと確認し、列車が来る時間を頭に入れていたという。今回の事故では、一部報道で、現場にいた作業員のうち少なくとも一部が時刻表を持っていなかったと伝えられている。これを男性は「考えられない」というのだ。
雇用関係は? どのような教育や研修を行なったのか?
今回亡くなった4人のうちX社が手配した3人について、栃木県警は当初、職業を「不詳」と発表。雇用関係にはわかっていない部分がある。
集英社オンラインは東武鉄道と東武建設、X建設にそれぞれ、外部から作業員が線路内作業に入る前にどのような教育や研修を行なっているのか質問した。
これに対し東武鉄道は「警察や運輸安全委員会の捜査・調査中ですので、現時点においてお伝えできる情報がございません」と回答。東武建設は「東武鉄道に取材対応を一任している」とだけ答え、X建設は「話すことは何もない」と取材を拒んだ。
「鉄道会社は近年、列車運行中にダイヤを縫うように線路に入る危険な昼間の作業は行わず、列車が走っていない夜間に行なうところが多いです。作業員人一人ひとりに列車の接近を知らせる警報器を持たせているところもあります」(社会部記者)
今回の事故ではこうした対策はいずれもなされていなかった。見張り員がきちんと機能していたのかどうかだけでなく、作業員が自ら身を守れるような教育や準備がどれほど行なわれていたのかの検証も必要だろう。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班